57 Side.ディオン 2
「…………。」
──流石に量が多いな…。
父様の力を借りて、示された世界の定められた歴史を読破する…。
見落とさぬように注視し、父様では見抜けないような粗を探す…。
だがやはり量が多い…。 一つ一つを見落としが無いように読むとなると、かなり神経を使う…。
父様でもできないことはある…。
父様の力は「全てを支配する力」ただそれのみ…。
それ以上でもなく、それ以下でもない。
父様の支配の力は、魂を持つものに対して特に秀でている。
動物であろうと植物であろうと、例え機械であろうとも、魂を持つものであれば父様の支配の力から逃れることはできない。
が、逆に魂を持たぬものは、ただ強制的に従えることしかできない。
剣を宙に浮かせて操ったり、大砲を遠隔で打ち出すことはできても、操っている対象の状態を把握することはできないのだ。
その剣が折れる寸前であろうと、その大砲が爆発して崩壊する直前であろうと、父様には察知することが出来ない…。
何故なら物は意思を持たないから…。
自身の状態を主に伝えることが出来ない故に、父様は自身で直接確認するしかない…。
だからこそ、触れることが出来ない物は、操ることはできても状態を知ることはできないのだ…。
それでも、父様は違和感を感じることはできる。
故に、定められた歴史に直接触れることが出来る僕が、父様の感じた違和感を解析して、父様に報告するのだ…。
僕は記録の解析と解読を得手としている。
あらゆる記録を読み解き、それらの間違いや変化、変質を解析することができる。
それ故に、普段は図書室に篭って書物を相手に格闘している訳だが…。
父様の力が無ければ、僕では定められた歴史を感じ取ることはできない…。
だがこの目で見ることが出来れば、解読も解析も容易いことだ。
そうして読み進めているが、一向に見つからない…。
最初から読んでいる上に、見落としが無いように読む速度も普段より落としている。
これでは全てを解析するのに一日はかかってしまう…。
だがまぁ、根気よくやることが秘訣だ。
しっかりと読み進めて行こう…。
※ ※ ※
漸く八割と言ったところか…。
これまで読んだ部分には、全く問題は見られなかった…。
となると残り二割の内に、問題の部分があるということになるが…。
さて…。
…………!? こ、これは…!?
一部分だけ、改竄してそれを隠蔽した痕跡がある…。
定められた歴史が書き換えられることはありえない。
刷られて出版された本を、一つ残らず書き換えることが出来ないのと同じなのだ…。
だがこれは…。
…そうか…、そういうことか…。




