52 Side.フィロン 3
今回も思っていたよりは楽な仕事だった。
基本的に父上は、私達で対処できる仕事を割り振ってくれる。
一人で無理なら複数で、その眷属で無理ならより強い眷属がと言った風に、決して達成できない仕事は割り振らない。
父上は私達が傷つくのを酷く嫌う。
父上のエゴに、私達を付き合わせていることを気にしているのだろう…。
アグニルはそんな父上を気に病ませないように、一切の容赦も慈悲も与えずに仕事を完遂する。
あいつは父上を崇拝しているから、父上に余計な心配を掛けたくないのだろう…。
「何を呆けているのだ? フィロン」
「何でもないよ、アグニル」
アグニルの問いかけに、平静を装って返事をする。
思えばアグニルとは共に仕事することが多い。
対集団戦に秀でたアグニルと、対個人戦に秀でた私。
正面切っての戦闘ならアグニルには負けないが、集団の殲滅速度ではアグニルには到底敵わない。
犬猿の仲ではあるが、それ故にお互いのフォローをやりやすいとも言える。
アグニルがこうして戻ってきたということは、有象無象の処理は終わったのだろう。
アグニルが失敗する道理もないし、見逃すような間抜けでもない。
思案しているうちに、焼却も済んだようだ。
「よし、これで全部だな?」
「周囲に潜んでいる気配は無い。 そっちは?」
「根こそぎ燃やし尽くしたさ」
「なら戻ろう」
鍵を取り出して虚空に差し込む。
何時もの時空転移が起動し、私達は母星に飛ばされる。
そして何時も通り、玉座の間へと転送された。
「戻りました、父上」
「無事に終えました、我が主よ……」
玉座に座る父上に帰還を告げるが、珍しく父上の反応が無い…。
ほんの数秒の間をおいて──。
『おかえり…、フィロン…、アグニル…』
幾分か疲れを滲ませた声色で思念が伝えられる…。
何かあったのだろうか…。
「我が主よ、何かありましたか?」
聞く前に先に聞かれてしまった…。
『二人とも…、今すぐ次の仕事を任せても構わないかい…?』
どうやら予定外の事態が発生したようだ…。
であれば──
「御命令とあらば、喜んで!」
「父上がそう言うということは、余程の急ぎなのでしょう? ならば成し遂げます」
気力は十分残っているし、問題はない…。
『実は…、回廊で次元穴が確認された…』
!……そういう訳か…。
『回廊の方は既にエクスタシスとその配下に任せている…。 二人に頼みたいのは…、全ての宇宙に存在する次元穴の処理だ…』
「承りました…。 が、流石に二人だけで全ての宇宙に存在する次元穴を塞ぐのは、時間がかかり過ぎるかと…」
宇宙の数は無数にある。
とても二人で出来ることではないが──。
『それは理解している…。 君達以外にも次元穴を塞げる眷属達を…、既に向かわせている…。 数が多いから…、単純に人手が足りていない…』
「成る程…、解りました。
次元穴は切り取ればよろしいのですね?」
人手が足りていないというのは、次元穴を塞げる力を持っている眷属が足りないということだろう…。
私は切り取った次元穴を切り刻んで原子に還せばいい…。
アグニルは単純に次元穴そのものを燃やし尽くせばいい…。
効率と言う意味ではグーロが一番適任だが……成る程、それで珍しく居なかったのか…。
次元穴を塞げる眷属を、文字通り総動員しているという訳だな…。
『次元穴の場所は此方で見つけて知らせる…。 頼んだぞ…』
「「お任せを!」」
父上より思念で伝えられた次元穴の位置に転移する。
可及的速やかに終わらせ、父上を安心させてやらねば…。




