4 Side.アリス
紅茶の入ったティーカップをソーサーに戻し、一息つく。
その時、知覚範囲内に存在する気配が三つほど増えた。
どうやらフィロン達が戻ってきたようだ。
「フィロン達が戻ったようね……」
「そうみたいだね、お姉さま!」
私の言葉に追従するように、双子の妹が言葉を発する。
ティーカップを机の上に置き、椅子より立ち上がって妹に言葉を投げかける。
「フィロンとアグニルは風呂場に向かうようだし、労いついでに入浴に行きましょうか……」
「レッツゴー!」
妹は元気よく扉を開け放ち、廊下へと出る。
私もティーセットの片付けを使い魔達に命じ、扉より廊下へと歩き出す。
「暫くは皆で穏やかに過ごせそうかしら?」
「差し迫った問題はないってお兄様も言ってたし、大丈夫じゃない?」
「だといいのだけどねぇ……」
妹の言葉に、あまり期待を持たずに返事をする。
世界消滅の危機は突発的に発生する。
クレスが常に監視しているとはいえ、介入可能な段階になってから告げられるこっちの身にもなってほしいものだ。
とはいえ、あの時から付いていくと決めたのだ。
今更彼に文句を言う権利もないし、その気もない。
「何かあればクレスが直接か、リースを介して眷属全員に告げるでしょうし、一先ず今はこの余暇を楽しみましょう。」
「はーい!」
私の言葉に元気よく答える妹。
そうして会話を交えながら通路を歩いていると、向かう先に黒髪の少女と蒼い髪の少女の姿を確認する。
二人の姿を視界に捉えると、妹が声を上げる。
「おーい! フィロン、アグニル!」
「テレスお姉さまにアリスお姉さま、ただいま戻りました」
「テレス殿にアリス殿、ただいま戻り申した」
歩み寄りつつ二人と言葉を交わす。
フィロンは変わらず私達を姉と呼び慕う。
(既に私達よりも背は大きくなったというのに……)
そしてアグニルも変わらず敬称を付けて呼ぶ。
「何事もなく終わったようね。 フィロン。 アグニル」
「無様を晒して、父上の顔に泥を塗りたくはないですからね」
「無様を晒して、我が主の御尊顔に瑕を付けたくはないですからな」
私の言葉に、フィロンとアグニルが同時に答える。
二人が睨み合う。
「真似をしないでくれる?アグニル……」
「それはこちらの台詞だ。フィロン……」
途端に周囲が険悪な空気に包まれる。
(また始まった……)
「ほら、廊下で言い合う暇があったら、さっさとお風呂に入りましょう。」
「そーそー。
言い合いなら何時も通り、鍛練所でやればいいじゃない。」
そして我が妹も何時も通り止める気もないし…。
「そうですね」
「そうですな」
再び睨み合いになりそうな二人の腕を引っ張って脱衣所に連れ込む。
この二人の仲の悪さは何とかならないものだろうか…。
※用語解説:世界消滅の危機
外的要因によって発生する世界の危機の総称。
特徴的な前兆があり、クレスはそれを感知できる。




