46 アリスの邂逅
私とテレスがクレスと出会ったのは、彼の血の匂いに惹かれたからだ。
偶々街に潜入して美味しい血を探していた時、他の何とも比較にならない芳醇な血の匂いを察知した。
それがクレスだったのだ…。
私達は深夜、彼の寝込みを襲った。
あの時の私達は、自分達より強い者はいないと思っていた…。
故に気づかれても何とかなると…、そう考えて無計画にクレスの寝込みを襲った…。
そしてそれが間違いであったと、後に思い知らされた…。
私達は彼の力によって、身動きが出来ない状態で尋問された…。
何故襲ったのか──と。
その目は私達を観ていて、私達を見ていなかった…。
怒りも無い、嫌悪も無い、ただただ疑問に思うという目で、彼は私達を観ていた…。
だから私は正直に答えた…、美味しそうだったから…と。
そしたら彼は言った。
僕の血を飲めば君たちは僕の支配下に置かれることになる──と。
それでもいいなら飲めばいい──と。
私はそれを本気にしていなかった…。
血を飲まれたくないからそう言うのだと思った。
故に私は躊躇なく、彼の首筋に牙を突き立てた…。
そして私は…、途方もない多幸感と安堵を胸に、彼に平伏していた…。
私自身の心は何も変わっていない。
彼に親愛等抱いていないのに、身体は彼に平伏しきってしまっている…。
彼が言っていたことが事実であることを、私は身を持って理解した…。
テレスはクレスに平伏する私を見て、同じようにクレスの血を口にした…。
そうしてあの子は…、今まで見たこともないような幸せそうな笑顔で、クレスに抱きついた…。
恐らく望んでいたのだろう…。
あの子は力がとても強かった…。
私ですらテレスと戦えば勝ち目は皆無と思えてしまうほどに圧倒的な力だった…。
だがクレスはそれを遥かに凌駕していた…。
圧倒的だとか絶対的だとかそんな次元じゃない…。
言葉で表すことができない力の格差が、クレスと私達の間にはあったのだ…。
だからテレスは喜んだ。
自分を抑えてくれる者がいる…。
自分を組み伏せれる者がいる…。
力を持て余していたテレスにとって…、それは紛れもない福音だったのだろう…。
テレスは喜んで彼の支配下に入った。
そして私は…、そんなテレスを放っておくことはできず、ましてやクレスから目を離すことなどできそうもないと理解し…、彼と共に行くことを決めた…。
これが私達の始まり…。
あいつを最期まで見届けることを決めた、私達の最初の出会い…。




