38 Side.ベヒーモス
突如ジズの思念が漏れ聞こえてきた。
(ふむ…。 どうやら宇宙船が帰還したようだな……)
(確か…、大分前に宇宙航行試験に出発した船だったか……)
(5000無量大数年連続航行耐久試験だっけ? もうそんなに時が経つのかー……)
俺達にとっては刹那に等しい時間だ…。
船が出発した頃と今でも、この惑星の矮小なる者共は何ら変化を見せない…。
あの頃は確か…、我らがこの惑星に来てから3度目の文明崩壊の時だったか…。
矮小なる者同士で争い、勝手に滅び、そしてそれでも残った僅かな者達で再び文明を築いていった…。
あの頃はまだ矮小なる者共に感嘆することも多かった…。
だがそれも10度目の文明崩壊あたりには、失望で埋め尽くされていた…。
何よりも、矮小なる者共の学習能力の無さには、我でさえも恐怖を抱くほどだ…。
過去何度も起こってきた文明崩壊の原因全てが、矮小なる者共の傲慢と無知からくる愚行の果てだと言うのだからもう笑うしかない…。
そしてその文明崩壊のたびに、俺らの使役者が秘密裏に原因の除去と惑星の核の修復と、各大陸の生態系の正常化を行っている。
そのおかげもあって、今日までこの惑星の矮小なる者共は滅びずにいるというのに…、恩人に等しいはずの俺らの使役者に対する厚顔無恥なる数々の要求…。
俺らの使役者の言葉が無ければ俺達で滅ぼしているところだ…。
(彼の船が戻ってきたとなると、いよいよ俺らの使役者が言っていた来るべき時ってやつが近づいているというわけだな……)
(我らが使役者が予知した来るべき時…。 今の所は何もかも我らが使役者の予定通りだ……)
(来るべき時には、僕たちも全力を出していいんだよね?)
レヴィが堪えきれない様子で尋ねてくる…。
(あぁ…。 その時が来たら我らは全力を揮うだけだ……)
(とりあえず準備運動はしといたほうがよさそうだね)
(いざって時に動けずに俺らの使役者に迷惑をかけるのは不味いからな…。 俺らの使役者に頼んで、仮想異界への門を開いてもらおう)
彼の異界ならば、俺達も周囲を気にせずに全力を揮えるというものだ…。
(一人ずつ順番にだぞ?)
(流石に誰もいなくなるのは不味いしねぇ…)
(ジズが一番、レヴィが二番、俺が最後で構わない)
(いいの?)
(我は問題ないぞ)
(なら僕もいいけど……)
一番監視に向いているのがジズなのだ。
俺とレヴィの二人では空は見えぬが、空から来るものは誰もいない。
空中要塞もあるからこの順番が一番問題がない。
(んじゃジズ、早速俺らの使役者に頼んできてくれ。)
(お願いねー!)
(…結局我がやるのだな…)
何事も適材適所なのだ。
※用語解説:グノーシス489号
クレスが機械人形達に造らせた特別製の宇宙船。
機械人形達に操縦させることを目的とした造りになっており、ボタンや操縦桿等の人の手が必要になる機構は存在せず、全て機械人形達の電子機器操作機能に対応している。
搭載されている武装の火力も凄まじいが、最上位の眷属達にはかすり傷すら負わせられない程度でしかない。




