37 Side.ルキウス
「漸く帰ってこれたか…。 懐かしの我が母星へ……」
窓の外に映る母星を見ながら、感慨深く息を吐く。
「早速主殿に報告しなくてはならぬな…。」
宇宙船を衛星砦の船渠に格納し、船より降りる。
「整備を頼んだぞ」
「了解しました。 ルキウス様」
整備士である機械人形に船を任せ、足早に転送装置へと向かう。
久々に主殿に会えると思うと、自然と足取りも軽くなる。
原初の宇宙の探索と宇宙船の性能テストのための長期任務であったが、無事に5000無量大数年間稼働し続けてくれた…。
これで最終テストは無事終了と言えるだろう。
後はこれと全く同等の物を無数に生産せねばならないが…、それは自分の仕事ではない。
そんなことを考えているうちに、転送装置がある部屋へと辿り着く。
部屋へと入り、整備と警備を担っている機械人形に挨拶する。
「お疲れさん。 今、使えるかな?」
「お帰りなさいませ、ルキウス様。 はい、問題なく稼働しております。 世界樹へ戻られるのですね?」
「あぁ。 主殿に報告をしなくてはね」
「では、1番転送門をお使いください」
「ありがとう」
示された1番の転送門へと向かい、中に入る。
そして光に包まれたかと思うと…、懐かしの木で出来た部屋へと辿り着いた。
「お帰りなさいませ、ルキウス様。 創造主様への御報告ですね?」
「あぁ、主殿は今何処に?」
「玉座の間におられるはずです」
「分かった、ありがとう。」
会話もそこそこに、転送部屋を退室して玉座の間へと向かう。
ここを歩くのも随分と久しぶりだ。
踏み心地を確かめるかのように、のんびりと歩く…。
「アレ~? ルキウスじゃ~ん! 久しぶり~!」
「やぁシメール。 君も相変わらずのようだね」
廊下の向かう先からシメールが姿を見せる。
ここを旅立つ前と変わらぬ姿に、確かな安堵と帰ってきたという実感が湧いてくる。
駆け寄ってきたシメールが問いかけてくる。
「造物主様に報告~?」
「あぁ。 思念での会話は幾度もしてきたが、直接主殿の顔を見るのは5000無量大数年ぶりだからね」
「もうそんなに経つのか~。 ルキウスが旅立ったのがついこの間のように思えるよ~」
「確かに永劫の命である我々には、5000無量大数年でさえも人の瞬きにすら劣る時間ではあるけどね」
だが流石に、誰とも話さずに5000無量大数年を孤独で居続けるとなると、狂わずにいられる自信はない。
任務中も仲間達と会話があったからこそ、5000無量大数年も宇宙を彷徨っていられたと思っている…。
宇宙に放り出されても死なない身とはいえ、未だにあの暗闇は僅かながら恐怖を覚えずにはいられない。
「んじゃ造物主様の所にいこっか~」
「やっぱりついてくるんだね……」
「今はグーロの時間だしね~。 最近は新しく入った子達とも取り合いでさ~。 ちょっと時間が減っちゃったよ~……」
「そういえば、また新しく何人か眷属になったみたいだね。
僕が宇宙を彷徨ってる5000無量大数年の間に、またいっぱい増えたようだねぇ……」
取り合いと言ったが、つい最近入ったと聞いた二人のことだろうか…?
「宇宙を彷徨ってるで思い出したけど、宇宙船の性能はどうだった~?」
「今までのものとは比べ物にならないね…。 航海性能も…、積んである武装もね……」
5000無量大数年間、止まることなく航行し続けることが出来ただけでも、飛躍的進化だろう…。
以前は休息と整備を間に幾度も行いつつ、500無量大数年が精々だった…。
それを思えば、今度の宇宙船は間違いなく最高峰の性能と言える。
積んである武装も、追尾光束銃と収束原子分解砲だけだが、威力は追尾光束銃でさえ惑星を穿ち、収束原子分解砲に至っては大規模な黒穴さえも消滅させた…。
宇宙船の全体を構成する装甲も、時空の歪みですら問題にならない特別製だ。
来るべき時への備えとしては、一先ずは申し分ないだろう…。
「だがあれだけの武装であっても、僕らの力の方が消費も威力も上だというのが、少し…、ね……」
「一応アレはリース以外の自動人形達に運用させるためのものらしいし~、私達以外にも戦闘能力が備わったとすればいいことじゃな~い?」
「まぁ、ね……」
アレほどの宇宙船でさえも消耗品に過ぎないというのが、どうにも不安を拭い切れない…。
アレを消耗品にしなければならない程の事態が、刻一刻と迫っている事実に…。
「まぁ大丈夫だよ~。 造物主様がまだ人の身であったころから準備してるんだし~。 何時も通り私達は造物主様を助けるだけだよ~」
「そこは同意するよ。 どんな事態であろうと、主殿の御意のままに……」




