36 Side.ディサイエン帝国の一人の転移者
目の前の友人が告げる内容に驚きながらも、恐る恐る聞き返す…。
「…それは本当ですか…?」
「あぁ…、この目で見た。 状況から見てあの少女がやったんだろう…。 あれはとてもじゃないが勝てる気が微塵もしないな……」
「普通ならば信じられんが…、俺も各地でそういう者らがいるという噂を聞いている」
「どんな噂ですか?」
「何でもそういう者達は"二つ名"で呼ばれていて、各国の王と取引をしているそうだ…。
そして過去に滅んだ国々の殆どが、彼らの手によって滅ぼされたものらしい……」
そう言って考え込むように目を閉じる分厚い鎧を着込む大柄の友人。
「それはまた…、とんでもない者達のようですね……」
「だが納得できるぜ…。 実際に見れば解る。 アレは…ヤバい……」
そう言って深刻そうな顔をする軽装で身軽な細身の友人。
「帝国の図書館に資料があるといいのですけれど……」
「それは恐らく大丈夫だろう」
「何故だ?」
「ここ帝国は、その"二つ名"で呼ばれている者らと最も長く取引をしている国らしい…。彼らから聞いた様々なことを本に記して、その本を各地に流しているようだ…。 恐らく彼らに不用意な真似をしないようにだろう……」
「その本は今ありますか?」
「そういう話を聞いただけだからな…本は持っていない。 図書館にいけばあるはずだ……」
「んじゃとりあえず行ってみますか。 何も知らないまま相対したら大問題だからな」
「僕だけよく知らないようですからね。 興味が尽きませんよ」
「俺も詳細は知らん。 とにかく行こう」
そう言って席を立ち、勘定を済ませて酒場を出る。
目指すは帝国大図書館…!
※ ※ ※
図書館に来て目的の本について受付で聞いてみました。
どうやら歴史資料棚にあるらしいです。
早速探してみると、意外にもすぐにその本を見つけました。
他にも色々ありますが、目的の奴らが記されているのはこの本のようですね。
机と椅子があるところで本を開き、そのページを読み進めていく…。
「蒼い髪の少女…、蒼い髪の少女…。 ……!これか……」
そこにはこう記されていました。
蒼炎の千手:豊穣の大樹を守護者にして、我ら人の世との交渉人の一人。
守護者達の中でも特に苛烈な性格で知られている。
過去に彼らの主である原初の覇王を侮辱する真似をした国々の殆どが彼女の手によって焼失したのは彼女たちを知る者らの間では有名な話である。
だが同時に原初の覇王の敬虔な信奉者であることも知られているため、原初の覇王を侮辱したり彼の者の慈悲を無下に扱ったりしなければ、とても真面目な交渉人であることは彼のシャンサブイック皇国が証明している。
戦闘能力については、守護者達の中でも純粋な破壊能力では彼女に比肩する者はいないとされている。
敵対は特に避けるべし。
この記述を読む限りでは…、
「彼女の主を侮辱したりしなければ、とりあえずは敵対することはなさそうですね……」
「つまりあの国の国王は、彼女の主を侮辱したってことか……」
「もしくはその主の慈悲を無下にしたといったところだろうな……」
(あるいはその両方でしょうか…。)
他の守護者についても色々載っています…。
軽装の友人が見たという桃色の髪の女性についても載っていました…。
神出鬼没の桃色の淫魔:豊穣の大樹の守護者の一人とされている。
彼女は交渉人ではなく、交渉人達の送迎役を担っている。
彼女自体の痕跡は神話の時代から存在し、何らかの出来事があり原初の覇王の軍門に下ったのが定説とされている。
戦闘能力については、性別を有する時点で彼女が普段は抑えている魅了の淫気には抵抗できないため、無性の者でなければ彼女との戦いの舞台にすら立つことは敵わない。
他の守護者達と同じく、やはり敵対は避けるべし。
どの守護者達の記述においても、敵対は避けるべしで締めくくられている。
つまり人の身では勝てない存在だということなのでしょう…。
「確かにありゃ抗えそうもないなぁ…。 …あっやべっ、勃ってきちまった……」
「娼館に行ってくるとよい…。 帝国にあるのはどれも国が認可している優良店だぞ」
「まぁ今日は一旦解散して、君が明日の朝に宿に戻るまで自由時間を過ごしましょう」
「すまねぇな…、お前ら……」
考えることは山積みですが、一旦忘れてゆっくりしましょう。
方策を立てるのはそれからでも遅くはないですからね…。




