34 Side.フルボルート王国の国王
(何故このようなことに……)
「急いで消せぇ!」
「駄目です! 水をかけても火の勢いは弱まりません!」
「魔法で火は消せないのか!!」
「やっています! ですがまるで効果がありません!!」
今城は蒼い炎に包まれている…。
この玉座の間のあちこちにも燃え広がり、一向に消える気配がない…。
「国王陛下! 外へ避難を! このままでは…!」
「そ、そうだな…! 皆の者、外まで避難する! 道を切り開くのだ!」
騎士達や宮廷魔導師達を鼓舞し、玉座の間を出ようとする。
すると扉が吹き飛び、誰かが入ってくる…。
「な、何者だ! ここを何処だと思って───!?」
入ってきたのは、嘗てここに来た蒼い髪の少女だった…。
奴はこちらを見遣り、言葉を吐き捨てる…。
「貴様らは我が主の慈悲の手を振り払った…。それだけに飽き足らず再度攻め込んでくる愚かしさ…。実に許し難い……」
「だ、誰に向かってそのような口を利いておる! 我はフルボルート国の国王だぞ!! た、たかが守り人風情が…、無礼にも程があるだろう!」
そう言い放つと、奴は不快そうに表情を歪める…。
「貴様らの間違いは二つだ。 一つは我の目の前で我が主の慈悲の手を振り払ったこと…。 二つは我らの力を見誤っていたことだ……」
「なに!?」
「ま、まさかこの炎は…!」
宰相が恐る恐る尋ねる…。
「我の炎だ。
前回は我が主より殺すなと言われておったが…、今回は我が主より許可を得ている…。 故に、逃げられると思うなよ屑共…! ただの一人も、灰も残さぬ…!」
そう言い放ち、奴の背後を蒼炎の手が埋め尽くす…。
「ヒィ!?」
「な、なんだそれはぁっ!?」
宰相と身を寄せ合い、恐怖に震える…。
「我らをよく知りもせずに愚行を犯したのか…、無知と言うのは実に愚かしいな…。 貴様らはよい反面教師と言えよう……」
「あ、ありえるか! たった一人で国を滅ぼすなぞ、ありえるはずがない!! 人の世にあっていいはずがないのだっ!!!」
宰相が恐怖を堪えきれずに叫ぶ…。
だが現実はこれだ…。
帝国の言うとおり、謝罪して誠意を見せるべきだったのだ…。
「頼む! どうか謝罪を受け取ってほしい! 貴殿の主殿にもどうか謝罪をさせてくれぇ!!」
恥も外聞も無く、額を地面に擦りつけて許しを請う…。
だが少女の口から告げられた言葉は、我らを絶望へと誘う言霊であった…。
「貴様らは勘違いをしている……」
「へっ?」
「貴様らには既に、何一つ権利は残されてはいない…。二度目の侵攻を犯した時点で、貴様らの命運は尽きたのだ…。 貴様らに残されているのは、灰も残さずこの世から消え去ることだけだ!!」
そう言うと、奴の背後の蒼炎の手が膨れ上がる…。
(い…、いやだ…!)
「ゆ、許してくれぇ! 頼む、どうかぁ!?」
「や、やめてくれぇぇ!!」
(死にたくないぃぃっ!!)
「雑音が耳障りだ…。 疾く燃え尽きろ……」
少女のその言葉を最後に、私の意識は闇に染まった…。




