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32 Side.フルボルート王国の宰相



「くそがっ!」


 物に当たり散らしながら、憤りを吐き出す。

 気が付けば、蒼い髪の少女(あのガキ)の姿はなかった。


(何をされたのかわからぬが、舐めた真似をしてくれる…!)

「どいつもこいつも…、たかが樹の守り人風情に何を及び腰になっているんだ…!」


 単独で国を滅ぼせるとか言われているが、そんな奴が存在するはずがない。

 それにもしそんな奴だったとしても、数の力に勝てるものはいない。

 どんな英雄だって、戦争では容易く死ぬのだから…。


「まぁいい…。 最低限の護りだけ残して海軍の全戦力を投入すれば、たかが守り人風情、すぐにでも謝罪に来るだろう……」


 そうすれば我が国は、あの豊穣の大樹の全てを独占できる…!

 あれだけの資源があれば、我が国が世界を統一し、真の支配者となることだって可能だ…!!

 約束された未来に酔いしれていると、扉の外から声がする。


「宰相様、報告があります。 入ってもよろしいでしょうか?」


「入れ。 聞かせろ」


 扉を開けて、騎士隊長が入室する。


「式典は滞りなく終了。 海軍の準備は万端整いました。 いつでも出撃できます……」


「そうか…。 ではすぐにでも行くのだ。 たかが守り人風情に、あの大樹はもったいないからな…」


「私達騎士団の精鋭も同道し、確実に征圧してみせましょう!」


「任せたぞ…、騎士隊長……」


「はっ!」


 報告を済ませた騎士隊長が退室する。

 これで我が国の覇権は確定したようなものだ…。

 後はのんびりと凱旋する彼らを待てばよい…。


 すると再び、扉の向こうより声がする。


「宰相様、帝国から書簡が届きました」


「一体何の用だ? まさか一部海軍を同道させてくれなどと言うまいな?」


「中はまだ見ておりませんので、内容までは……」


「わかった、入れ。 確認しよう」


 秘書官の一人が入室する。

 さて一体何なのか…。

 ………。


「ははははは!」


「内容はなんと?」


「軍を引いて守り人に謝罪をしろだとさ…! 全くばかげている。 帝国ともあろうものがあのような守り人に及び腰など……」


「以前来た帝国の書簡もそうですが、他の国から来た書簡にも帝国のものと同様の事が書いてありましたね……」


「どいつもこいつも、たかが守り人の何を恐れているのだ? あのような者どもは圧倒的な数で征圧すれば、瞬く間に靡くというもの…。 まぁいい。これで我が国が世界の覇権を握るのは確定したようなものだ」


 他国が一切干渉してこないなら、豊穣の大樹の全ては我が国の物となる…。

 今に見ていろよ諸外国の愚か者共…。


(世界を手に入れるのは、我らフルボルート王国だ!!)




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