29 Side.アグニル 2
愚か者を愚か者に引き渡す…。
殺気を漏らさぬように、愚か者達に接する…。
「では、確かに引き渡したぞ」
「……確かに、受け取りました…」
「今回は初犯だから我が主も見逃したが、次はないぞ…」
そう言いながら愚か者を睨み付ける。
「!? そ、それは勿論でございます!」
「解っているならばいい…。」
そう言いながら背を向けて、玉座の間を退室しようとする…。
すると、玉座の間にいた騎士達が周囲を取り囲み、刃を突きつけてくる。
(やはりか……)
「何の真似だ…?」
「ふんっ! のこのこと一人で来るなど、随分と不用心だな!」
「今回の侵攻は、貴様を誘き出すための罠よ! 貴様を捕らえて人質にすれば、あの豊穣の大樹の資源を我が国が独占できるというものだ!」
愚か者達が何やら騒いでいる。
ちらりと国王に視線を向けると、怯えが抜けきってはいないが、喜色に染まった表情をしている。
(まぁ予想通りか……)
「はぁ…、我が主の慈悲を解さぬ愚物どもが……」
「おい、状況を理解していないのか? 貴様に逃げ場はない! 大人しく捕まるならば、丁重に扱うが?」
愚か者が下卑た視線を向けてくる。
丁重に扱う気など欠片もないのが見え見えだ…。
(さてしかし、我が主からは殺すのは禁止だと言われているからな…。)
(仕方ない……)
「貴様らが大人しくしていれば、我も何もしなかったものを……」
「この人数差でどうするってんだ? いくら強いとは言っても、数には勝てねぇんだよ!」
「帝国の奴らは逆らわないほうがいいとか言っておったが、たかが一人に彼の帝国も情けないことだ……」
(愚か者達の雑音もそろそろ耳障りだな……)
(今すぐに黙ってもらうことにしよう……)
私は玉座の間にいる全ての者達に向けて、殺気を乗せて威圧する。
その瞬間、玉座の間にいる愚か者共が意識を失い、その場に倒れ伏す。
私はそれを一瞥することもなく、その場を立ち去る。
玉座の間より外に出ると、見張りの騎士達が全員倒れている。
どうやら眠っているようだ…。
ということは…。
「お迎えはお前か、淫乱ピンク」
「随分と優しいわねぇ…。 てっきりあたしは城が燃えて無くなるかと思ったわぁ…」
「我が主はあのような愚か者共にすら慈悲をお与えになられる。 我個人が感情のままに振る舞って、我が主の名を貶めるような真似はできん……」
「でもぉ、これであいつらが諦めるとは思えないわよぉ?」
「これで理解できぬような愚か者共なら、我が主の慈悲を賜るに能わぬ。 我が主の優しさを理解せず、感謝も示さない愚物など、存在することそのものが害悪だ…。今度こそ我が塵も残さず燃やし尽くしてくれる…!」
我が主の優しさに唾を吐きかけた奴らには、もったいない最期だろう。
「まぁそれはいいわぁ。 とりあえず帰るわよぉ」
「あぁ…。 我が主に報告せねばな…」
私は淫乱ピンクに連れられて、その場を後にした。




