23 Side.フィロン 2
「~~~♪…んー…、うん! 問題なし、と」
日課を終え、鏡台の上を片付け始める。
父上と同じ、漆黒の髪の毛が風で揺れる。
昔はこの黒髪が嫌いだったが、父上に拾われてからはこの黒髪が大好きになった。
この黒髪は、契約以外で父上との確かな繋がりを感じられる、唯一のものだから…。
「さて、父上の元へ行こーっと♪」
上機嫌で部屋を出て、父上のいる玉座の間に向かう。
父上は、夜以外は玉座の間で全世界を監視している。
玉座の間の造りそのものが、父上の力を十全以上に発揮できる一つの舞台装置なのだ。
「今父上の所には…、グーロ以外にも誰かいるかな?」
グーロは何時も一緒にいるから気にする意味はない。
そういえば、また新しい眷属が増えたと聞いたけど…。
(父上の邪魔になるような者でなければいいのだけども……)
不安を振り払うように、足早に父上の元へと向かう。
と、向かう途中でヘスティアの後ろ姿を見える。
「おーい! ヘスティア~!」
「へっ? あっ! フィロンさん!」
この前、新しく父上の眷属になったヘスティアだ。
生贄にされたことによって、生まれ育った世界では死んだ者として認識されており、戻ることが出来ないのだそうだ。
それでアリスお姉さまの話を聞いて、父上の眷属になることに決めたようだ。
「どう? そろそろ慣れた?」
「いえ…、此処は広すぎて…。とてもすぐには覚えられそうもありません……」
「まぁ下手な都市よりも広いからねぇ、ここは」
世界樹は父上が自ら創り上げた、全世界を監視するための場所だ。
世界樹内部には様々な場所が存在し、四季折々どころか、ありとあらゆるものが採取できる場所が各層に存在する。
そうした物資は全て、今いるここで使用される。
生活物資は世界樹内部で採れるし、娯楽用品も世界樹内部で採取できる物資で作製できる。
全てを自前で賄うために、父上が生み出した豊穣の大樹。
それがここ、世界樹だ。
「まぁ基本的に望んだ物は手に入るから。 必要なものが在ったら係りの者に言うといいよ。 全世界に存在する物全てのレシピがあるから」
「…やはり凄いところですね…、ここは…。 あの御方の為そうとしている事を思えば、これほどの場所になるのは必然なのでしょうね……」
「で、どう? 皆とは仲良くできそうかな?」
「はい。 皆さん気のいい人ばかりですし…。 私のような者にも、親切にしてくれますし……」
「父上の眷属になった以上、父上の理念の遂行にも協力してもらうけどね」
「それはもちろんです…。 あの御方の為そうとしていることを知った時から、あの御方には言葉で表せないほどの畏敬と、親愛の情を抱いております…。 あの御方の為そうとしていることの難しさ、浅学ながら理解しているつもりです…。 だからこそ…、私の全てを捧げて…、あの御方の力になりたいと思うのです……」
やはり、ヘスティアのような純粋な子ほど、父上の理念は尊く見えるようだ…。
父上に好意的なようで娘としても嬉しい限りだ。
「これから父上の所にいくけれど、ヘスティアも一緒にどうだい?」
「! はい! ご一緒させてください…!」
ヘスティアの嬉しそうな返事を聞きつつ、再び父上の元へ向かうために歩き始めた。
※用語解説:世界樹物資管理課
世界樹内部で採集されるあらゆる資源を管理するチーム。
構成員は全員機械人形である。
世界樹内部の資源は無尽蔵なため、管理課の存在意義にクレスの手間を軽減する以上の理由はない。




