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私は精霊ではありませんよ   作者: lassh-leyline
第四章   闇を払う者たち
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第一話   闇に潜む者(赤月)

第一話   闇に潜む者(赤月)

 


 以前からアスカちゃんに聞いていたとおりボクたちの敵はまだ生きていました。


 最初聞いたときはどうやって仕返しをしてやろうかと思ったけど、アスカちゃんに絶対に手を出しちゃ駄目だって止められていました。

 実際シッポが掴めてない上にアスカちゃんの仲間がいまだ全容を掴めていないって言ってました。


 だからもしボクたちの力が必要なら協力するよって言ったらちょっと困った顔で、

「ウチは非戦闘要員に指定されてるの。まあ子供が作れる娘は本来保護施設で適当な人と結婚することになっていたのですが、魔法が使えて子供を産めるのはウチだけだったから、せめて知識を広めて村の再建を手助けするのを条件に出してもらえたの。そのときに戦闘組とは一切関わらないことも条件だったので、この件に関しても連絡すら取れていない状況なの。恐らく次の留学生を護衛してくる人か次の人そのものとしか連絡できないと思うから、それまでは動かないで欲しいの。」

「敵対する気はないから、向こうから何かしてこないかぎり様子見だね。」

「それにナオが指揮を執ってるなら無茶なことはしないだろうし。早く連絡を取りたいよ。」

 アスカちゃんはナナさんのおばあさんの養子だったのです。


 事前にナナさん宛のメッセージの入ったアイテムを渡されていたのですが、例の領主事件で無くしてしまいました。

 アスカちゃんはナオさんが”月の翼”という組織を指揮しているため、ナナさんにも教えることが出来ず、そのこともこの子を苦しめる一因だったらしいです。

 ナナさんはおばあさんの行方が分かり無事だったのが嬉しかったのかどこか明るくなりました。彼氏とも少しずつですが進展しているようですし・・・うらやましくは無いですけどね筋肉とか・・・筋肉とか筋肉とか・・・


 もうすぐボク達が出会って一年何かイベントでもしたいなって思っていたら急にナナさんから呼び出しの遠話の魔法が掛かってきて、寮に帰ってきました。どこかみんなで暮らせる家でも借りようかって話もあるけどそれまではこのまま寮暮らしです。



 失礼な人(貴族の女)に絡まれました。付き人の人達がかわいそうだったので遊んであげたのですが、どうやらナナさんの用事とはこの人が持っていた装飾品に関してだったようです。そして遅れてきたシンディーはこのことを知っていました。ナナさんの指示でボク達はユークちゃんに後ろを向かせ耳を塞ぎます。あのときの幻影でも出したのでしょうが、男達の下卑な嬌声女達の悲鳴砕かれる音切り刻まれる音肉の焼ける音・・・いつのまにかボク達も耳を塞ぎ泣き出してしまいました。あのときの恐怖が蘇ってきました。

 

 さっきの付き人の中には直視できずに泣きながらしゃがみ込んでいる人もいます。


 ナナさんの横、扉(なぜここに扉だけ?)越しに立っている筋肉男は拳を振るわせて佇んで居ます。扉で視線を遮っていますが彼は目を閉じています。魔力自体を結界で抑えています。じゃないと周囲に影響が出るくらい荒れています。

 もしかすると他の誰よりも怒りを覚えているのかも・・・


 冷ややかな視線で現状を見ているシンディーあんな冷たい視線のあの子を見るのも始めて。まるで見慣れた絵画でも見ているような。

 もしかして、何か見えないものが見えているのかも。


 それでも貴族の少女は気丈にも震えながらも直視して答えます。もしかしたら現状を理解できてないだけ?

「なんですか?こんなまやかしで脅せばどうかなるとでも思ったのですか?なめられたものです。所詮下賤のモノが考えそうなことですわ。この程度のことならおじさまのところでやった獣狩りの時にも見たし、獲物の解体ならそのときに教わりましたわ。屋敷の子達の去勢も飼い主の義務として私がしたし、いまさらこのて・・・・・ひっ・・・」

「ならば遠慮することもいらないわね。ふふふ、実際に体験してみましょうか?痛みだけでも。」

「な、ナナそこまではさすがに・・」ナナの顔を見た彼氏は言葉を続けられなかったようだ。

「てぬるい!でもそこまでしか耐えられ無いでしょうね。まともに話が出来なくなったら元も子もないもの。それにこの子は三日は何をしても死ぬことはありません。死ぬのはそのあとです。」


 もう我慢できませんアスカの方を見ると。全身から汗を出しながら、聞こえない声を聞きその内容に呆然としている。

「しっかりしてアスカ!!シンディー!ナナ!もうだめ、っげんかい!ユークと帰ってる!ごめん。」

 二人を抱えると寮の部屋に向かって逃げた、全力で。責め立てる二人の顔が見えなかったのは幸い。きっとあのとき以上の恐怖を感じていただろうから。

 二人をボクのベットに放り込んでからボクも間に飛び込んで、頭から毛布を被る。

 怯える二人を抱きしめ、なだめる。きっと二人には普通じゃ分からない何かが見えてしまったんでしょう。

 とりあえずの安堵を示す二人を見てボクは、ここに居る意味が解ったような気がします。

 まだ幼い2人にとっては向こうの世界は辛いはず。だからそれを癒やすためにボクがいるんだね。ただの獣人であるボクがここに居て良い理由。

 うん、いいよ。ボクがついていてあげる。

 2人が成長してボクを必要としなくなるまで。ボクから巣立つまで。





 今回の一件でユークちゃんにまで男性恐怖症がうつっちゃったみたいです。まだ嫌悪感ぐらいなので問題はありませんが。

 ナナさんは腕輪と指輪を回収できたようです。今も腕と指に着けています。

 魔法で代用していた機能を肩代わりさせて本来の機能で使っているそうです。

 その一つ遠話の機能ですがこの機械の機能を使えば今まで以上に楽に遠くまで伝えることが出来ます。魔法と併用することで私達にも使えるようになりました。

 

 アスカちゃんはあの女の子に怯えています。

 人も動物も区別が付かず、自分と家族以外は人とも思っていないだけでなく、傷つけても殺しても代わりがいると思い自ら好んで危害を加えようとします。死んだ人たちの思いや怨嗟の声を聞いてしまったため、なおのこと恐れてしまったようです。

「あの娘とお付きだった人たちはもうすぐ命が尽きます。恐らく情報が漏れたことを知られた王子によって粛正されるんでしょう。もう二度と会うことはありませんよ。」

 

 ここで驚いたことが二つ敵の正体、この国の第三王子で道楽生活を満喫している放浪の王子。神出鬼没のお忍び王子。そのコンセプトを元に作られたお芝居が”お忍び姫様”です。勧善懲悪のヒーローが極悪テロリストの幹部だったのです。

 そして、シンディーには人の寿命が分かるのです。何時もは分かっても思い出せないように魔法で忘れさせているのですが、巫女の力を誰かに使ったら消しきれなくなってしまうそうです。


 敵は強いです。下手なことをすると町の人全てが敵になります。正義の味方の敵になるのだから。

 


 でも私達は負けませんよ。こちらには精霊様が、精霊の巫女様が着いていてくれます。


 ナナさんが言いました。

「粛正が済んでほとぼりが冷めてから、こちらに手を出してくるでしょうからそれまでに防御を固めないと。」

 小さな扉を抱きしめ部屋の扉の方を見る。

 開け放たれた先の廊下には椅子に座った男がいた。彼等を追いかけて食らいつき叩き潰すためにだけに生きてきた男。

 王国の二大放蕩息子のもう1人。


「あなたも協力してくれるよね”月に食らいつくもの”マルゼーク。」



ナナはマル君と2人で出かける時用に小さな扉をもらいました。以来彼の代わりに抱いて寝たり撫でたり時にはキスしたり・・・・それは彼と普通に接するようになっても変わらず、以降彼女のトレードマークとなりました。

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