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私は精霊ではありませんよ   作者: lassh-leyline
第四章   闇を払う者たち
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閑話   漆黒の翼(平穏の終わり)

前章の時期の話ですがネタバレ要素があるのでここに入れます。

閑話   漆黒の翼(平穏の終わり)


 

 そう、ウチは知っていた。

 ウチらの、前の領主の一件は終わってなんかいないことももっと大きな背景があることも。

 そしてウチ自身がそのことに関係することも禁じられていました。



 ウチの課せられた指命は村の再建に必要な知識を集めること。そして、村を担うべき子孫を残すこと。

 そのためにはそれ以外の任に着いている仲間のことは一切聞かされず、また聞いてはいけない。

 たとえ奴らに捕まってもなんとか生き残ることだけを考えよと言われました。

 それが子を成す能力が残った者たちに厳命されたことでした。


 奇しくも奴らに捕まったにも関わらす、こちらのことは気付かれなかった。

 子を成す力を失ったウチは、生き残るが、村に帰る体力も無くした体でここで生きていく決心をした。

 現状では仲間に今の状態を知らせるすべも無い。

 私に出来ることは次に来るであろう子供たちのために知識と生活できる場所を確保すること。

 出来うることならこの学園で一族の居場所を作ること。


 そしてその全てを無かったことにしてしまうかもしれない魔法。

 全てはこの体に縛られて選択の余地も無かったこと思い知らされました。そして頷いたときに逆によるすべを無くし彷徨い歩くウチが見えます。

 ウチだけが普通の体を手に入れ、村の仲間を見捨て当てもなく罪悪感に苛まれながら生きていく勇気はウチには無い。ウチには重すぎる。


 結論は出た。そう思っていた。


 ちょうどその日、ナナさんとエミリーに初潮が来ました。まさに初潮です。二人とも今までと同じはずなのに違う、改めてこれで子供の産める体になったんだって泣きながら笑っていた。

 

 気が付いたらウチは巫女様に足蹴にされていました。ここまで憤りを露わにしたシンディーちゃんを見たことはありませんでした。

 改めて自分が何をしたのか思い出しました。


 巫女様の足下に這いつくばり乞い、願ったのです。罪人が刑吏に命乞いをするがごとくのように・・・

 あわれな愚民たる私にもお慈悲をと・・・巫女様の表情が悲しみから怒りに変わる。即座に蹴り飛ばされました。


 ナナさんに師事し体力もそこそこあるシンディーさんのけりです。

 やろうと思えば一撃で沈んでいたでしょうが、怒りにまかせた力任せの蹴りです。一瞬意識が跳びましたがすぐにまた這い寄ります。


 もう何が何だか分かりません唯々あの魔法を、奇跡のお力を・・・


 本来なら止めるであろう二人も今は身動きが取れず。ユークちゃんは恐怖で身をすくませる。


 幾度となく蹴り飛ばされ踏みつけられてもう痛みは麻痺しています。それでも足にしがみつき必死に乞い続ける。


 気が付いたら胸ぐらを捕まれて何度も両の頬をはたかれながら問われます。

「あなたは誰ですか?ただの壊れた翼人ですか?ならあなたの居場所はここにはありません。とっとと出て行きなさい。」

 腫れた両目の隙間から見える、シンディーのくしゃくっしゃに歪んだ泣き顔。ああ、これはむこうもウチの顔がまともに見られていないな。

 もうろうとした頭の中で思い出す。ウチはこんな顔見たくない、シンディーの笑顔が見たかったんだったと。


 いつのまにかシンディーを抱きしめ頭を撫でてやっていた。

「ごめんな、ウチは所詮壊れた翼人でしか無かったんだ。大好きなシンディーにこんな顔させても気が付かないただのだだっ子でしか無いんだ。みんなにも迷惑掛けたね。」

 こんなだからウチは村でもただ子供を作るだけの役割しかもらえなかったんだろう。


 部屋から出て行こうとシンディーを解放し振り返ろうとすると、

「どこに行くのですか?」

 胸の中から強い口調で語りかけてくるシンディー。

 見下ろすと私の胸に顔を埋めていた彼女が私を抱きしめてきた。

 そのときになって私は身動きが取れないことに気が付いた。

 前からはシンディー、後ろからはユーク、二人に場所を取られて近づけなかった二人は麻痺して感覚を失っている翼を左右それぞれが握り絞めている。


 そこで気付く、鼻をつく異臭。あ、またやっちゃってる。

 蹴られ殴られている間にでも催したのか部屋中が酷い有様、かろうじて寝ていた二人は無事でしたが抱きついてるシンディーとユークはもう酷いことに・・・

 

でも二人とも抱きついてくる前に気付いていたはずなのに。涙が傷にしみます。


「とりあえずはみんなの着替えとお部屋の大掃除ね。アスカはそこからうごかないで。傷口からばい菌が・・・どうせ関係なくなるか、とりあえず逃がしたら駄目よナナ、エミリー。「あいよ。」「わかってるって」さあユーク始めるわよ。」

「イエス!マム!!}軍隊式の敬礼をするユーク。どこで憶えてきたのやら。

 二人の安らかな魔力がこの部屋のみならずこの寮全体を包み込むように高まっていく。




 掃除も済み魔力も回復した頃、私は裸でベットに横になっています。

「さて、アスカ、あなたには罰を与えます。罪状は私達が親友であることを忘れたことです。」

「もうしわけありません。でも覚悟は出来ています。私はシンディーが一番嫌だと思うことをやってしまったのですから。」

 ようやく落ち着きを取り戻しました。痛みもぶり返してきます。これは自分への戒めとしてはまだ軽いとは思いますが、シンディー自身が罰を与えてくれます。あ、駄目じゃんそれってご褒美的な何かに変わってます。あとで自戒しておこう。


「あなたの全てを奪います。」

 え?すべて?えっとあ、それって一族の最大級のプロポーズの言葉で、あなたを自分自身と思って命を賭けて共に生きようと言う意味です。

 つい恥ずかしさのあまり体をひねり視線から隠そうとする。多分全身紅くなってる感覚のあるところは・・・

「あ、はい。これからよろしくお願いします。」

 つい普通に受諾の言葉で返してしまいました。ウチはこっちの趣味は無かったのに、シンディーの言葉に胸が高鳴ります。

 私の様子に微妙な笑顔でうなずくと、

「あなたは今ここでこの瞬間に死んでもらいます。そして新たに私の親友アスカとして誕生するのです。いいですか、あなたはただの“アスカ”としてこれから生きていくのです。」


 そう、みんな死んでいった。訳もわからずに。そして待っている翼妖族として再びうまれてくるときを。

 そのためには一人でも多くの子供を産まないと。

 いやそんなことじゃない、まだ縛られている。


 ウチは家族が欲しいんだ!!

 カッコいい旦那様を見付けて、沢山の子供たちに囲まれて、大勢の仲間に囲まれてみんなと幸せになりたい。

「はい、覚悟は出来ています。」

 そのためにもウチは生まれ変わる。


「あー!」ユークちゃんの奇声で、その場の空気が変わる。

集まる視線に紅くなって言い訳をする・・・

「さっきのシンディー様の言葉って、確かどこかの妖精族のガチなプロポーズの言葉だったんです。”世界のプロポーズ 全集”に載ってましたぁ。道理でって、思っちゃって・・・」

「まじ?」「で、アスカがマジに受け入れたと。」

「えーと・・・ともかくいいのね?だめでもやるわよ、私は。」


 ようやく落ち着けました。

「そもそも翼の友はさっきの言葉よりさらに高位にあたるのですから、今更ですね。さあ私の全てを捧げますわよ。受け止めて。」

「では。これより最後の奇跡を行います。この儀式を持ってこの術は封印をします。みんなには封印の承認と鍵を。」

 少し茶化したようなでも本心からの言葉に急かされるように儀式は始まりました。




 そしてウチは漆黒の翼を手に入れた。

 以前の飾りになってしまっていた白磁にもまけない。いえ、もっと最高の翼です。

 体の一部が黒く変わるのはさまよえる魂を集める者の特徴です。精霊神教の開祖は精霊と旅をしていた黒髪のエルフだと言われています。

 多分ユークと同じような巫女の従者だったんでしょう。

 そしてウチにこの翼が下賜されたのはウチも巫女とともに歩み共に生きよと言うことなんでしょう。

 ウチの夢とは少し違いますが、きっと相応しい男性が現れたそのときは子育ての間だけでも長期のお休みをもらえばいいでしょう。


 それにこの翼からは村の仲間たちの気配がします。ずっと見守っていてくれたんです。そしてその意思は変わること無くこの身に宿りました。



 服は明日買い出しに行くことになりました。

 今晩はシンディーを独占できます。今は裸で抱きしめています。全身と翼で彼女を抱きしめその存在を感じることが出来ます。

 疲れて眠るシンディーちゃん。ある意味ウチの旦那様なの。うふっ。

 でも今日はゆっくりと寝てね。お休みなさいね。あ、な、た。


 翌早朝・・・・


「だーあっつい!!もう夏だってのになにかんがえてるのよ、いい加減に離しなさいよ!!」

 羽根って熱を貯めたり逃がしたりでこの時期は熱を持っちゃうの。繰るんで大切に抱いていたら怒られちゃった・・・くすん・・・

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