第四十八話
王城で第六王子にダンスを教えるようになってから四日ほど経ったが、その間、王族の秘密調査も、王子との親睦もまるで進展がなかった。
フィレンは流れるレコードの音楽に合わせながらゆったりと体を前後に動かす。
ロウソクの火が部屋を仄かに照らす。
右手を握り、同じように揺れる赤髪の少女が言った。
「ムーンナイト様、良い感じです。ここで回転です」
少女と位置を入れ替わるように回転する。
フィレンは王子が寝静まった夜、リアとダンスの練習をするのが日課になっていた。
「それにしても、王城の中がこんなに狭いとは思わなかった」
フィレンはつい愚痴をこぼす。
王城が狭いというのは敷地の話ではない。
城自体はとても大きく、荘厳さを感じるが、問題はフィレンが行動できる範囲だった。
城の中は王子ごとに区分けされており、その境には昼夜問わず、兵が設置されている。
第六王子に客人として城に招かれたフィレンが利用できる区域は更に狭く、城中を探し回って王族の秘密とやらを見つけようと画策していたフィレンは出鼻を挫かれた。
「リア、なんとか王様が使っている区域に入れないか?」
「難しいですね。使用人も王様に仕えるチームと王子に仕えるチームで別れているくらいですから」
「王子と親睦を深めようにも、ダンスレッスンを終えたら、すぐ夕食、入浴、就寝って、つけいる隙もありゃしないよ」
リアはふふっと笑う。
そのとき開け放した窓から入った風がリアの髪を浮かし、ロウソクの火を吹き消した。
わっという小さな驚きの声と共に、腕にしがみつく柔らかい感触を感じる。
「リア、ただの風だよ。ロウソクの火をつけておいて、窓を閉めてくる」
そう言って、ベランダへと近づくと、なにやら黒い物体が見えた。
それは、人の形をしていた。




