第四十話
「私と仲良くなりたいなんて、なんの冗談でしょうか」
先に口を開いたのはリアだった。
「冗談ではないわ。あなたを知りたいのよ」
「どうしてでしょうか。私がキスをしたから? それとも、王子に近づかぬよう邪魔をするからでしょうか」
「どっちもね。なぜそんなことをしたの?」
「サリトール様の専属ですから、近づく者を排除するのは当たり前です」
「使用人の範疇を超えているように見えたけれど、そこは幼なじみで補填しているのかしら」
「……」
「あなた、休日は、王子の側にいない間は何をしているの?」
「……。あなたに関係ないでしょう」
――関係がない。
きっと常日頃から他人との交流をそうやって断っているのだろう。
向かい合って話している相手が、無関係なはずないのに。
「他の使用人に訊いても、あなたが何をしているか知っている人はいなかったわ。それも関係ないことかしら。一生のほとんどを過ごす職場の仲間でも無関係ということかしら」
「あなたになにが分かるの」
「何も分かりませんわ。あなたを知らないもの」
フィレンはにこりと笑って続ける。
「ですので、お買い物、付き合ってくださる?」
「嫌です」
「無視するのですね。王子のお言葉を」
「……」
半ば強制的にリアを連れ出したフィレンは、ウィンシャード中心部にある商店街に来ていた。
ここは昼夜問わず人が盛んに行き交っており、食材を買いに来たのだろう老夫婦がいれば、ウィンシャード騎士養成学校も近いためか学生も多くいる。
フィレンが買い物にこの場所を選んだのにはとある理由があった。
物珍しそうに出店を見回す赤髪の少女に声をかける。
「もしかして、ここに来たのは初めてかしら」
「ええ。王子はこのような場所には行きませんので」
てっきり関係ないでしょと、突っぱねるかと思ったが、リアは素直に答えた。
「では、あちらのお店から見ていきましょう」
そう言って、小物が並べられた出店へと向かうと、数歩後ろからリアが付いてくる。
使用人としての癖だろうか、てくてくと歩くようすが、母鳥についていくヒヨコのように見えて可愛らしく思えた。




