第三十八話
さて、一度状況を整理しておこう。
朝、フィレンは広々としたダイニングで、黙々と朝食を頬張りながら考える。
対面にはサリトールが座っているが、あまりに大きなテーブルであるが故に会話がはばかられた。
元々の計画における目標は、王子から『故郷イメルーナにいた理由』や『王族しか知り得ない情報』を聞き出すことだ。
そのためには、王子がフィレンに惚れている状態にさせるが長期的に考えたときの得策である。
フィレンは「ビレーヌ」という偽名を使って、第六王子に接触を図り、偶然も重なって王城でダンス教師をすることになった。期間は、舞踏会が催されるまでのおおよそ十日間だ。
舞踏会までに第六王子サリトールを落とす。
が、問題は赤髪の少女だ。
正面から視線を少し右にずらすと、背筋を伸ばしたその赤髪の使用人が身じろぎもせず立っている。
今朝、第六王子よりも先にダイニングに着いていたにも関わらず、後から来たサリトールをわざわざフィレンから最も離れた位置に座らせたのがこの赤髪だ。
リアと呼ばれているその少女は、まだ若く見えるにも関わらず第六王子の専属使用人らしく、その彼女はどうやらフィレンが王子と親密になるのが気に食わないらしい。
実際、昨日はフィレンの髪にゴミが付いていると言って、ウィッグを王子の目の前で取り去ろうとした。
――未遂に終わったため、本当のところの意図は分からないが、きっと少しでもフィレンの邪魔をしようとしてのことだろう。
あのような大胆な行動をしたのは、フィレンがウィッグを付けていることをただつげ口するだけでは無駄だと思ったからではないかと、フィレンは考えた。
そうでなければ、王子から批判を買うような行動に出る必要が無い。
というわけで、当面の課題は「赤髪少女が行う妨害を止めさせること」である。
リアと呼ばれる少女を無効化する方法急募、である。
ぱっと思いつくのは、使用人である彼女がクビになることだが、サリトールは彼女のことをリアと名前で呼んでいた。
他の使用人の名前を呼んでいるところは聞いたことが無い――にも関わらず。
つまり、第六王子にとって彼女は特別なのだ。
状況を整理したものの、大した案が思いつかなかったフィレンはいっそのことストレートに訊くことにした。
「王子、後ろの赤髪の方は幼なじみ?」




