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第三十七話

「年下ですか?」


 サリトールの言った意味が分からず聞き直す。


「はい」


「……」


「も、もしかして元から年上でしたか? てっきり同じくらいか年下だと」


「いえ、サリトール様と同年ですわ。……王子を年下だと思えばいいのですわね」


「そうです。ビレーヌさん」


 今までにないくらい真っ直ぐな瞳だった。

 王子ではなく、生徒としてここにいるようなそんな風だったので、こちらも最大限教師らしく振る舞おうと腰に手を当てる。


「サリトール様、マジメに勉強してください」


 しかし、イメージと違っていたのか、王子は首を振りながら、勢いよく立ち上がり、スクワットのような体勢で力説した。


「違います! 敬語は使わず、もっとこうフランクな感じで!」


 負けずと熱が入り、フィレンも立ち上がる。


「サリトール! 早く風呂に入れって言っただろ!」


 王子は一瞬呆けたような表情になったかと思うと、すぐさま真面目な顔をして力を込めた。


「そうじゃないです! フランクだけども、もっと優しげな。……そう、教会にいそうな雰囲気で」


 何となく理解した。

 教師というよりも、牧師のような感じで話せば良いのだろう。


 次は声音を柔らかくして言ってみる。


「サリトール。もう遅いから、早く寝なさい。子守歌を歌ってあげる」


「うん! 寝る!」と実際に部屋中央のベッドに向かおうと、王子が一歩踏み出したとき、ガチャリとドアが開いた。


 赤髪少女のリアが水を入れた二つのグラスをトレーに乗せて立っている。


 そして、何事もなかったかのようにテーブルに水の入ったグラスを置き、彼女の定位置である部屋の隅っこに移動した。


 その間、少女は一度お辞儀をしたのみで、一言も発しなかった。


 サリトールは、一言。


「ありがとう」とグラスを手に取って言ったが、その目は空中を漂っていた。


 水を飲み干すと、また明日と言い残し、リアを連れて出て行った。


 ああ、王子って大変だな。


 そうほんの僅かばかりの同情を向け、食事を終えたフィレンは日が沈みかけた部屋の中、ベッドで横になった。

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