第三十一話
車が向かった先は城だった。
といっても、寮として使われているウィンシャード城ではなく、正真正銘の王城。
王族が、ウィンシャードの国王が住む根城だ。
城のエントランスに入ると第六王子はまだフィレン達と同年代に見える若い使用人に食事の用意をするよう命じ、フィレンに言った。
「あなたを客人としてお迎えします。食事の準備ができる前にシャワーへご案内しましょう」
フィレンは申し訳なさそうに言った。
「こんな私めにそこまでしていただく訳にはいきませんわ。それも王子様だったとは気づかず、先日は失礼なことを」
「いいや、気にしなくていい。これも何かの縁だ。もし、私ができることがあればなんなりと」
「では、一緒に踊っていただけないでしょうか? 舞踏会であなたと踊る姿を見せれば父上も許してくれるかもしれません」
「いや、それは……」
サリトールは口ごもった。
そのとき、上階へと続く大階段から声がかけられた。
「なんたる愚かさだ、サリトール。女性からの誘いを断ろうとは。いつになったら、甲斐性を持つのだ我が弟よ」
階段を一段一段優雅に降りながら、近づいてくるのは金髪ロングの男だ。
後ろに四人のドレスを着た女性を連れている。その男のことはウィルに聞いて知っていた。
第五王子のシャルマン・ミッドガルドだ。
サリトールはシャルマンから目をそらし、
「いえ、そういうわけでは……」と曖昧な返事をする。
それを聞いてサリトールは満足げに「参加するのだな。では、私も同じ舞踏会に足を運ぶとしよう」と言い、去って行った。
思っていたよりも良いやつじゃないか、とフィレンは思ったが、サリトールの顔は青ざめていた。
悪いことをしただろうか。
いや、しかし、サリトールはなぜか私の故郷の町にいた。
もし先に悪事を働いたとすれば、この男だろう。
その後、第六王子はフィレンをシャワールームへ案内すると、また食事の席でと言い残し、姿を消した。
フィレンは脱衣所で紫色のドレスと下着を脱ぎ、金髪のウィッグを外してシャワールームへ入る。
流石は王族といったところか、湯船も備えられており、寮の部屋に備えられたシャワールームとは比べられないほど広々としている。
これで客人用とは、無駄遣いもいいとこだ。
朝からドレス姿で張り込みをしていたせいで付着した土と汗を流すようにシャワーを浴び、湯船に浸かる。
お湯はとろみがあって、体が生き返るようだった。
だが、あまりのんびりしている暇も無い。
食事が用意される前に、城を探索しよう。
そう思い、シャワールームを出ると、脱衣所には新たに衣服が備えられていて、先ほど脱いだドレスはなかった。
金髪のウィッグもなかった。




