第二十八話
金髪ロング?
ウィルの呟きが耳に入り、どうして髪型を言ったのだろうと思ったが、深く考える間もなしに付け髭とタキシードで変装をしたバーツが芝居を始めた。
「ああ、君はなんて悪女なんだ! 君の父上が婚姻を許していないのに、結婚をしようと申すのか!」
「父上も母上も関係ないわ。必要なのは気持ちと誓いよ。互いに愛していくという誓い」
「なんて親不孝者か! 君とは今後一切縁を切らせて頂く! 舞踏会も君ひとりで行くと良い!」
バーツはそう言い捨てて茂みの奥へ消えていく。
フィレンは嘆き悲しむように肩を落とし、言う。
「なんて悲しいことなの。あなたも私の身分が欲しかっただけなのね……。ただ、愛をしたいだけなのに」
声を上げて嘘泣きを始めるフィレンに、ウィルがさっと近づき、ハンカチを差し出す。
「お初にお目にかかりますお嬢様。あなたのような方に涙は似合いません。夜露には早いかと」
「あら、お優しいのね」
ハンカチを受け取りながら、第六王子に聞こえないようウィルに囁く。
「どうしてウィルが慰めに来るんだ! 王子との出会いのシーンだぞ」
「それが、王子は金髪ロングが苦手らしいんだ。一旦中止にしよう」
「……。いや、大丈夫だ。僕に合わせてくれ」
フィレンがそう言うと、椅子から立ち上がり、王子にも聞こえるよう嘆く。
「ああ、何もかも捨て去りたい! 世間体も悲しみもこの髪の毛も。そこのあなた、ハサミでばっさりと私の髪を切ってちょうだい。思い出の分伸びきった哀れな髪を断ち切ってちょうだい!」
バーツがハッキリとした声で、
「ええ、それで気分が晴れるのであれば!」と言い、カバンの中を探ると、
「待った!」
第六王子サリトールがようやく声を出した。
フィレンが王子へと近づく。
「あなた様は私に哀しみを背負って生きろとおっしゃるの? それとも、あなたが代わりに舞踏会へと連れてって、哀しみを取り去ってくれるのかしら」
フィレンが真っ直ぐに目を見つめると、王子はすぐ目をそらし、そして走り去っていった。
茂みからバーツが出てきて言う。
「もしかして、失敗?」




