第二十五話
フィレンが女装――というか正真正銘女だが――して第六王子に接近し、イメルーナの情報を引き出す。
それは妙案だった。
フィレンは現在男として、存在している。
つまり、どれだけ、怪しまれたとしても、王子からしてみれば、存在しない人間を探すはめになり、見つかるわけもない。
そんな訳で、第六王子を恋に落とす作戦が始まった。
「って、わざわざ恋に落とす必要があるの?」
バーツが小声でフィレンに耳打ちした。
フィレンとバーツとウィルの三人は、授業が終わったばかりの教室の後方に並んで座っている。
前方には、地面に落とした紙をのそのそと拾っている哀れな第六王子。
これは推測でしかないが、彼は王子でありながら、生徒に嘲笑されている雰囲気を感じている。
王子というだけでも、他の人と違う悩みを持つだろうに、加えて、無能だとか、六位だとか、バカにされては心底辛い思いをしているだろう。そうしてできた心の穴を埋めるのが女遊び。
とすると、その懐と心に入り込むメリットは大きい。
上手くいけば、故郷の情報だけでなく、きっとあるであろう王族のみが知る秘密や、人脈が手に入るかもしれない。
「ただ、デートをするだけじゃなく、王子の心に入り込めれば優秀な駒になるかもしれない。情報を聞き出すだけじゃあ勿体ないから」
フィレンも小声で答えた。
バーツは逡巡して、しぶしぶといったように頷いた。
「じゃあ、まずはどうやって近づくかだね」
そう言って、作戦会議を続けようとしたとき、前方から男が近づいてきた。
「君達、ちょっと聞きたいんだけど」
紙の束を手に、フィレンらに声をかけたのは第六王子だった。




