第二十四話
なぜ、私たちの故郷に敵の王子がいるのか。
頭が熱くなる。
フィレンが王子に向けて駆け出そうと踏み出したとき、バーツが腕を掴んだ。
反射的に振り払おうとする。
「離せ!」
掴んでいるバーツの手がより強く締め付ける。
「フィレン。今はダメだ」
「でも、こんなとこにいるんだ。アイツはクロだろ。ぶん殴ってでも情報を聞き出す!」
「もし、あの王子が故郷の破壊に関わっていたとしたら、なおさら、僕らがここにいることを知られちゃだめだ。冷静になるんだ。仲間を危険にさらすのか」
仲間。
同郷で同年代の生き残った六人。
兵士が持っていた紙に書かれていた指名手配の六人。
なぜ、私達だけが狙われていたのか、ずっと疑問だった。
あの王子からなら何か聞き出せるかもしれない。
そのチャンスが目の前にある。
――だけど。
フィレンはチラとバーツを見る。
――もう仲間を失いたくない。
目をつぶり、二度、三度深呼吸をする。
「ごめん。もう大丈夫」
目を開けたとき、王子はもういなかった。
バーツは手を放し、一息つくと、言った。
「それじゃあ、あの王子にどう接近するか作戦会議を始めよう」
「え? あの男には近づかないんじゃないの?」
フィレンが首をかしげる。
「今ここではね。僕らがこの町出身だってバレないようにしながら、まるで、昨晩の夕食を聞くように、彼から情報を抜くんだ」
ウィルが言う。
「俺なら、直接王子に訊いてもいいんじゃないか?」
「それも危険だね。学校で僕らが一緒にいるのを見られている可能性がある。ウィル一人なら、疑われても大丈夫だろうが、僕らは細かく身辺調査されれば、きっと生まれを偽ったことがバレてしまう」
フィレンがウィルに訊く。
「自然に第六王子と話せれば良いんだけど、どんな趣味があるか知らないか」
「ええと、正直これと言った趣味は聞いたことないけど、噂では女遊びが趣味だとか……」
「悪趣味だな。だけど、使える。適当な女を捕まえて、そいつにイメルーナのことを王子に尋ねさせればいい。赤の他人なら、怪しまれて、身の回りを調べられても私達までは辿り着かないだろう」
バーツが首を横に振る。
「いいや、難しいだろう。もし、その適当な女性が手伝ってくれたとして、その人がイメルーナの事件について何も知らなければ、王子が適当にはぐらかしても気づけない。碌な情報は得られないよ」
「つまり、調べてもイメルーナや私達との関係が出てこず、それでいてイメルーナの事件に詳しい女だったらいいんだな」
「自分で言っておいてなんだけど、いるのかな? そんな人」
瓦礫に埋もれたピンク色のワンピースが風ではためいている。
フィレンは唇を薄く細めた。
「ここにいるじゃないか。僕が女装して、王子に近づこう」




