第三話
血の気が引くのがわかった。
リネンを巻いているとは言え、女だとバレた可能性は充分ある。
未だ床に押し倒された状態のフィレンは努めて冷静に述べた。
「ウィル・グリーングラス君。君は男が好きな趣味なのか?」
「……あ、ああ! 済まない。誠に申し訳ない」
ウィルは立ち上がり、フィレンに手を差し出す。
入学してから、半年、何事もなく過ごしてきて油断していた。
特にウィンシャード騎士養成学校の全学生は寮に住んでいるため、いつどんな状況から女だとバレてもおかしくない。
そもそも、男と女では体の特徴が多くの点で異なる。
胸は当然のことながら、背の低さ、髪質、声の高さ、喉仏、人差し指と薬指の長さといった手先でも男性ホルモンが多いほど人差し指の方が長くなると本で読んだことがある。
幼少期には男の子に間違われることがあるほど中性的な顔立ちのフィレンだが、体を触られるだけでも変に情報を与えかねない。
――もし、気づかれたなら……。
フィレンはウィルの手はとらず、自力で立ち上がると、ズボンについたホコリを払った。
バーツが声をかける。
「ウィル。おはよう。僕たちを呼びに来てくれたの?」
「そ、そうだ。お前たちと一緒に行こうと思って……」
「ありがとう。でも、ちょっと準備が間に合ってなくてさ。先に教室行っておいてくれない?」
ウィルは横目でフィレンを見ると、申し訳なさそうに頭を掻きながら答えた。
「……わかった。二人の席も取っておく」
「うん。またね」
ウィルが教室に向かったのを確認してから、バーツが言う。
「……バレたかな?」
「……さあ。あいつの反応からして僕にトクベツな感情を抱いているかもしれない。それを探る必要がある」
「と、言うと?」
彼とは出会ってから半年しか経っていない。
人とのつながりは時間ではないが、深く友情関係を結んだ覚えはない。
勿論、彼が一方的に私達のことを大親友だと思っている可能性がゼロではないが、陽気な性格なためか既に多くの友人関係があるようなので、私達に固執するとは思えない。
と、なると別の方面。
恋愛感情であれば可能性がある。
――私のことを女だと気づいたか、それとも――。
「あいつは女ではなく、男が好きな可能性がある。バーツ、ウィルがゲイかどうか調べるぞ」
「……もし、違ったら?」
「女だと気づいた可能性が高い。口止めする。呼吸が出来ないほどにね」




