第二十二話
なぜ第六王子を恋に落とす必要があるのか。
その理由は数日前にある。
その日、フィレンとバーツはウィルを連れて二人の故郷だった町「イメルーナ」を訪れていた。
故郷だった町というのは、もはや町と言える状態にはないからだ。
ほとんどの建物が崩壊し、辺りにボロボロの衣服や食器が散乱している。
あまりにも悲惨で、当時、どれほどの人が亡くなったのかわからない。
それでも、死体や骨が落ちていることはない。
亡くなった人たちは皆、同じ墓地に埋葬されているからだ。
ウィルはその光景を初めて目にして、掠れた声で言った。
「ここがフィレン達の故郷か……」
瞬きも忘れるほど目を見開いていた。
フィレンは真っ直ぐに町を見据えている。
「三年半前、朝は快晴だった。いつものように仲間たちと地下の秘密基地で集まって本を読んでいたとき、大きく揺れた。本棚が次から次へと倒れ、出口が崩れた。瓦礫をどかして、なんとか地下から這い出たとき、外は大雨と雷が降り、強い風が屋根を飛ばしていた。地震と台風が同時に小さな町を襲ったんだ」
「地震と台風が同時に? そんな災害聞いたことないぞ」
「知るはずもないだろう。特にミッドガルドの人たちは。なぜなら、それは仕組まれたものだったから」
「仕組まれた?」
「ああ。外に出るのは危険だと判断し、台風が過ぎ去るまで地下で身を潜めた。その間、私達を呼びかけるような、人々の声が聞こえたが、不思議なことにその声は町の人の声じゃなかったんだ。嫌な予感がして、私達はそのままやり過ごした。予感は当たっていたよ。ミッドガルドの兵士達がある紙を持って、私達を探していたんだ」
「捜索隊じゃないのか?」
「それにしては速すぎる。それに、その兵士達が持っていた紙には私と同年代の子供の名前だけが載っていたんだ。他にも子供はいるのに、私達の名前と、なぜか写真が載っていたよ。物陰に潜んで、様子を見ていると、兵士たちは瓦礫の下から、一人の男性を引っ張り上げた。そしたら、すぐ首根っこを掴んで、紙を見せ、なにかを問いただしていた。それで、用が済んだら、満身創痍の男性を地面に蹴とばし、去っていったんだ」
フィレンの拳は強く握られている。
声のトーンを少し落として続けた。
「私達の故郷は、誰かに滅ぼされた。そして、この国の王が関係している」




