第二十一話
地下での壮絶な戦いから一か月ほど経ち、中庭の木々は、冬に備えるように葉を散らし、地面に黄色のドレスを作り上げていた。
地下から脱出した後、再びあの巨大な地下空間へと足を運ぼうとしたが、地下空間どころか、迷路があった部屋もまるで存在そのものが無かったかのように消え去っていた。
結局、残ったのはドアの奥で見つけた綺麗な緑色の石をはめたネックレスだけだった。
そんな話を教室でしていたら、隣に座っていた緑髪の男――ウィルがわざとらしく包帯が巻かれた太ももをさすり、チラチラとフィレンを見る。
しかし、フィレンは気にした様子がなく、見かねたバーツが言った。
「その傷。やっぱり痛む?」
「まあ、大したことないね。なんせ戦ってできた傷だからな」
割と一方的に痛めつけられていた気もするが、気にしないでおこう。
二人の会話をなんとなしに聞きながら、フィレンは前に座る金髪の男を見据えていた。
男の名前はサリトール・ミッドガルド。
ミッドガルドという名前が示す通り、このミッドガルド王国の第六王子である。
金髪というには、色が薄めの髪を持ち、紫に近い青い目を持つ男には別名がある。
サリトールが立ち上がる。
が、すぐ後ろの机に腰が当たり、積まれていた紙が崩れ落ちる。
フィレンは呟く。
「あれが、落ちこぼれの六位」
ウィルが探偵の息子らしく、すぐさま情報を捕捉する。
「第六王子という王位と、学問でも運動でもパッとしない順位という意味で六位。誰が付けたのやら、王様に知られれば打ち首もののあだ名だな。王子というだけで取っつきにくいのに、無能で、しかも女遊びの噂もあると来たら誰も寄り付かないよな」
バーツがフィレンに向く。
「で、その王子を本気で恋に落とすつもりなの?」
フィレンが答える。
「ああ、あの王子を手中に収めて、王族の秘密を手に入れてやる」




