小話1 第一話
ウィンシャード騎士養成学校は街の中央にある人気学校なだけあって、知名度が高い。そして、その制服も人気があり、紋章付きのシャツは紳士の証として、街の人から尊敬されている。
騎士というだけあって、規律が厳しいのは当然だが、休みが少ないことでも有名だった。
週の内、2日休みの日もあれば、1日しかない日も、中には午後休みしかない週もある。
そんなわけで、ここの学生にとっては、休みの日というのはとても貴重な日であって、フィレンが朝食を食べてから、シャワーを浴び、ベッドでゴロゴロしているのは自然と言えるだろう。
「気持ちは分かるけど、先週も、先々週もそうして過ごしたじゃない。飽きないの?」
バーツは制服に袖を通しながら、肩越しにフィレンに話しかけた。
正直、やることが無くて暇ではある。
けれど、日々の学校生活は思いのほか過酷だから、この休みの日に休まなくてはという使命感で敢えて何もしていなかった。
「で、バーツはまた人助け?」
「そんな大層なことじゃないよ。毎週のように顔を出していたら、思いの外、街の人たちと親睦が深まってね」
「それで、頼りにされちゃって、牛の世話とか、庭の手入れとかさせられてる訳だ」
バーツは困ったように苦笑いをした。
「頼りにされるのは不快なことじゃないよ」
「問題は、休みが潰れることだよ。休みは休まなくっちゃ。バーツ、たまには断る勇気も必要だよ」
「……でも、今日も行くって約束してるしなあ」
「しょうがないな」と、ベッドから起き上がるフィレン。
「私が代わりに断ってきてあげるよ」
「ええと、バーツの地図によると、一つ目の約束はこの辺の……喫茶店?」
顔を上げると、レンガ調で自然に溶け込むような風貌の店があった。看板には「ヴィレーン」の文字。
「って、ヴィレーンかよ……」
喫茶店「ヴィレーン」は同郷の仲間である、ニファが店主兼看板娘として、働いている喫茶店で、店内は緑が多く、リラックスできる雰囲気で人気がある。
店に入ると、チリリンとベルが上品な音を立てる。
「あら、フィレン! いらっしゃい」
こんな朝から珍しいといった様子で、ニファはカウンターから出迎えた。
営業中のため綺麗に作られたスマイルだったが、目線はフィレンの後ろに向いていた。
「おはよ。ニファ。バーツならいないよ。バーツの代わりに――」
「――フィレンが手伝いに来たのね」
「バーツの代わりに断りに来た」と言おうとしたが、強引にカウンターに引っ張られる。
「前にやったことあるから、勝手はわかるわよね。朝早いからそんなにお客さんはこないと思うけど、よろしくね。すぐ戻るから」と、早口で捲くし立てて、店を出ていった。
「待って……」
と伸ばした手は行き場もなく、空中に停止していると、ニファと入れ替わるように二人組の客が入ってきた。
「……いらっしゃい」
「変わった挨拶だな」
フィレンは不器用なスマイルで出迎えた。




