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第二十話

 悪魔男の腕が素早く動き、避けるように双子が飛び退いた。


「なんだよ! なんだよ! これからだってのに、横槍かよ! もうちょっと遊んでも良かったろ!」


 胸に空いた穴はなんとやら。男はむくッと何事もなかったように起き上がる。


「良くない」

「試練は終わり」


 双子は一文で終わりそうな言葉を、二人で区切って言った。


 男がこちらに目線を送る。


「ま、紫髪の君、フィレンちゃんって言ったか。僕が文字通り倒れたってのは認めよう。だから、君の勝ちも認めてあげる。ただ、次は命の取り合い。決闘。殺し合い、だからね」


 そう言いながら、背を向けて、この部屋の出口――迷路に繋がっている穴――の下に移動し、その場で屈む。

 思い出したかのように顔だけこちらに向けて訊いてくる。


「ああ、もしかして、そこで伸びてる緑髪君に撃つ予定だった弾を、隙を見て装填してたのかな?」


 答える義理はなかったが、フィレンも訊きたいことがあったので、律儀に答えた。


「そうだ。おまえがバーツと話している隙に。三発しか入れる暇なかったけど……。――ねえ、どうして僕がウィルを撃とうとしてるって分かったの? 僕が女だってのも」


 男は屈んだままニヤリと、元から笑ったような顔を、さらに歪めて言った。


「僕が過去を見る悪魔だから」


 跳躍。


 一瞬で男は消え去った。


 あの双子女もいつの間にか消え、


「――フィレン!」と、後ろから抱き着くバーツ。


 牢も消えていた。


 残るは、ハンマーの残骸と、気絶したウィル。


 ウィルの様子を見ようと思い、足を踏み出したとき、バーツがあっ、と声をあげた。


「あれ、あんなドアあったかな?」


 指を差す方向を見ると、一匹の爬虫類とリスの精緻な模様が施されたドアがあった。爬虫類は四足で、尻尾がクルンと丸まっている。


「ヤモリ?」


 バーツが異議を唱える。


「カメレオンでは?」 


「なんで、ドアにカメレオンを書くのさ!」


「ヤモリだって意味わかんないでしょ!」


「ヤモリは家を守るって言うじゃない。ドアに書くには相応しい!」


「いやいや、さっきまでこのドアは無かったでしょ。それこそカメレオンみたいに隠れてたのさ!」


 別に爬虫類が好きなわけじゃないし、普段ならどうでもいいと思えることだけど、ついさっきまでクイズを強制させられていたからだろうか、つい躍起になってしまう。


「こうなったら、ウィルに聞こう!」


 ドアから離れようとして、手首を掴まれた。


「ま、まった」


「何さ! やっぱり、自信が無くなってきた?」


「違うよ。いいの?」


「なにが?」


「これほど綺麗な彫刻がされたドアだよ。この先、物凄いお宝だったりして」


「先に中を覗いておこう。ほら、トラップとかがあったら、手負いのウィルにとっては危険だから」


「トラップがあるなら、僕らでも十分危険だと思うけど……」


 バーツの背中を押す。


「ほら、早く入った入った!」


「わ、わ、急かさないでよ!」


 ドアの先は、細い廊下のような部屋だった。壁は遺跡の中にあるような、古風な模様がある。

中央には、溢れんばかりの宝物……という訳ではなく、背の高い台座に一つの首飾りが鎮座していた。


 銀色にきらきら光る首飾り。その中央には石がはめ込まれている。

 手に取ってみると思いのほか重量はないが、近くで見ると光を幾重にも反射して、より輝いて見えた。

 バーツが中央にはめられた石の埃を指で拭くと、石は綺麗な紫色の光を放った。


「綺麗」


 心からの感想だった。


 首飾りを慎重に首に掛ける。お嬢様になったような気分だった。フィレンが舞踏会に呼ばれた姫のようにヒラヒラと舞って見せる。


「ほんとに綺麗だ」


 バーツも感嘆の声を漏らす。


「うん。綺麗だ」


 もう一人の男も呟く。


「え?」


 バーツのすぐ後ろには、いつの間にかウィルがいた。


「び、びっくりした!」と、心底驚いた様子のバーツは鼓動を測るように胸に手を置く。


「驚いたのはこっちだろ。気づいたらあの気色の悪い男も、フィレンもバーツもいなくなってて、探し回ったら、妙なドアを見つけて、開けたら、フィレンがダンスをしているんだから」


 足を引き吊りながら、必死に探した先で踊っている人がいる様子を想像したら、可笑しくてつい、笑ってしまう。


「あ! ドア! 何の模様だった?」


 ウィルは急な質問に面を食らったようだったが、すぐに思い出すように空を見上げる。


「ええと、どんぐりを手に持ってるリスと……。あれは……」


 内心で、「ヤモリ! ヤモリ!」と唱える。


「あれは、うん。イモリだな!」


『はあ⁉』


 新たな勢力が加わった。


あとがき


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

いきなりの作者からの言葉に「誰だお前は!」と驚いておられることでしょう。

しかし、二十話まで読んでいただいた方々にお礼を伝えておきたかったのです。

「本当にありがとうございます!」


まだまだ第一章は続きますが、次回からは何話か小話を挟むつもりです。

ご感想、リアクション頂けると「嬉しい! 嬉しい!」となります。お気軽にどうぞ。


(そうそう、エピソードタイトルは毎回「第○○話」としていますが、思いのほか味気なかったので、どこかのタイミングで題名を付けていこうと思っています。では、また。)

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