第十五話
想像は当たっていた。
部屋の明かりが壁に沿って点灯していくと、にやけ面男が正面に現れた。
そいつは、片手を挙げて手を振っている。
「どうかな? 迷路は楽しんでくれたかな? 途中にプレゼントも置いておいたんだけど、どうだったかな?」
頭にウィルの死体がフラッシュバックする。
あれを仕掛けたのはこの男か。
「でもダメじゃないか、人をこんなに待たせたら……。人じゃないけど。ともあれ、見込み通りだったわけだ。一つ目の試練を突破するとは」
「試練? お前はなんなんだ。なにがしたい」
「人に教えを乞うなら、態度をどうにかすべきだよね。ま、人じゃないけど。僕、悪魔だけど……。というわけで、本当は二つ目の試練をするところだけど、特別。最終試練」
全く話にならない。
会話が成立しない。
ペースを握らせないようにだろうか、男は口を止めず、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。
「僕がこれから三つの問題を出す。それに正解すれば合格。一つでも間違えれば失格」
フィレンを指差し、言う。
「第一問! 紫髪の君は、緑髪君を殺そうとした。マルかバツか」
緑髪君というのはウィルのことだ。
この問いの正解は――。
「バツだ! フィレンが俺を殺そうとするはずない」
ウィルが自信あり気に答えた。
しかし……。
「マルだ」
バーツが答える。
驚いたようにウィルがバーツに向く。
「な、おい! 何言ってんだ――」
「――マルだ……」
フィレンも答えた。
私は、いったいどんな顔をしていただろうか。
ウィルはどんな顔をしているだろうか。
彼の顔は見ることができなかった。
すぐに、男が言った。
「お二人さん正解! 紫髪は緑髪が見ていない隙を狙って銃で撃とうとしました! ということで、緑髪失格!」
パン、という音。
続いて、ドカッ、と地面に倒れる音が聞こえた。
「う。うう、痛ってえ!」
ウィルがうめき声をあげながら、左足の太もも付近を押さえている。
「ウィル!」
フィレンとバーツが駆け寄り、ウィルの体にハンマーを固定するための紐を外し、その紐で足の付け根を縛る。これで血液の流出を遅らせられる。
歯を食いしばりながら、ウィルが訊いた。
「フィレン。本当なのか? 俺を……」
ウィルを殺そうとした。それは事実だ。
私の正体がバレればこの学校を退学させらえる。
いや、もし私の経歴が怪しまれたら、仲間も危険にさらすことになるだろう。
生き残った、数少ない故郷の仲間たちを。
かけがえのない人たちを。
だから、私は仲間と、ウィルの命を天秤にかけ、一時的であれ、ウィルの命を切り捨てた。
何も言えず、目を反らしたとき、耳障りな声が届いた。
「面倒くさい茶番はそこまで! それ以上は全員失格とみなすよ」
尚も片方の口元が上がった奇妙な笑みのまま、続けた。
「第二問! 悪魔は実在する。マルかバツか」




