第十三話
内壁が同じ。
ただ、それ以上でもそれ以下でもなく、そこに迷路を解くヒントが隠されているのか、それとも偶然なのかは知る由もなかった。
同じものを大量に作るなら、工場でもあれば作れるだろうか。
しかし、壁を生産する工場だなんて、聞いたことがない。
しかし、着目すべきはそこではなく、『内壁は軽く、脆い素材』という部分だ。
フィレンが初めに迷路を探索したとき、壁を叩いてみたところ、内部で音が響いた。つまり、空洞になっているわけで、破壊するのは容易だと感じた。
「提案がある。迷路が解けないという壁があるなら、その壁を壊してみるのはどうだろうか」
フィレンが出した案にウィルは眉をひそめた。
「何言ってんだ? メモに書いたとおり、この迷路にゴールはないんだぞ」
「その通り。全ての道が行き止まりだ。だから……」
用意したハンマーを持ち上げ、内壁に目掛けて思いっきり振り下ろす。
壁は立ちどころにヒビ割れ、不安定な土台に耐えられなくなった上部が崩れ落ちる。
白煙が立ちのぼり、迷路に大きな穴――新たな道が出来上がった。
「道を、自分で開けるしかない。これが正解なのかわからないけど、現状を打破するにはひとまずやってみよう。どこかに宝箱でも設置してあるのかもしれない」
正直、無理があるプレゼンテーションだった。
ゴールがないから、ゴールを作る。しかし、それはここがそもそも迷路であるという前提にある。
芸術作品とか、はたまた壁職人たちの秘密の練習場であればとんだ無駄骨になりかねない。
沈黙をバーツの笑い声が打ち破った。
「わはは。そうだね。フィレンらしいよ」
笑いが伝染したようにウィルも肩を揺らす。
「こんなっ……。こんなおん……無鉄砲な人……見たことないな」
少し言葉を選ぶ様子だった。
『女の子』と言おうとして、取りやめたような。
むやみに秘密を口外するタイプではないのは本当だったようだ。
もっとも、バーツは私が女だと知っているので不要な気遣いだったが、そんなことは野暮だろう。
ウィルは腕を捲り上げ続ける。
「今日は体力が余ってて、寝つきが悪くなりそうだったんだ。良い運動になりそうだな」
こうして、三人で力の限り内壁を壊し続けた。
壁は思いのほか多くあったようで、全員が汗まみれで体力も尽きかけたとき、ついに全ての壁が壊された。
ただ、案の定というべきか、宝箱もそれに準ずるものも見つからなかった。
辺りを見回す。
壁をハンマーで叩いている間は、何百枚もあると思われた壁だったが、崩れた瓦礫を見るとその数はあまりに少なく感じた。
と、そのとき、バーツの呼ぶ声がした。
「二人とも! こっちに来てくれ」
フィレンとウィルが駆けつけると、バーツは床を指で差す。
「ここ、このタイルだけ色が違うみたいだ」
他のタイルと見比べると、確かに色が白いというより、新しい印象だ。
バーツが続ける。
「少し離れて。このタイルも壊してみよう」
ハンマーを振り上げ、タイル目掛けて振り下ろす。
割れたタイルの破片一つ拾い上げると、その下に地面はなかった。
穴だ。
人一人が入れる程度の小さな穴がそこにあった。




