第十二話
フィレンとバーツは顔を見合わせ、当たりを見渡す。
どこにも死体は落ちていない。
死体を探して右往左往している様子を見て、ウィルが言った。
「まさか迷ったわけじゃないよな」
「迷ってない。ただ、どこにウィルが潜んでいるかわからないんだ」
――死体の方のウィルが。
「いるだろ! 目の前に!」
手をパタパタと広げ、存在をアピールする緑髪に「分かってるよ」とリアクションを返しながら、バーツに囁く。
「死体は?」
「どこにもないね。血痕もない」
ウィルは二人の前を先行して進んでいる。
呼びかける。
「ウィル。そこの部屋に入ろう」
「ここが迷路か!」
「ただの物置部屋。少し拝借したいものがあってね」
部屋の中は、雑草を刈るための立鎌や、色とりどりのペンキなど、学校を整備するためのもので溢れかえっていた。
工具類の塊から、身長の半分近くもの長さをもつハンマーを拾い上げる。
迷路を目の当たりにした緑髪はたっぷりと時間をかけて目の前の状況を把握した。
「こ、これが……噂の絶対に解けない迷路か」
噂では、『ゴールのない迷路』だった気がするが、どちらも解けないことに変わりないだろう。
まずは探索、とばかりにウィルは隅々まで迷路を巡った。
壁のシミ一つも見逃さないほど、探偵さながら、殺人事件でも起きたかのように細かく調べ、手帳にメモを残す。
調査を終えて出た結論は、
――ゴールはない。
――壁は二種類あり、外壁と内壁。
――外壁は校舎でよく用いられている壁と同じ。
――内壁は軽く、脆い素材。
――全ての内壁は模様が完全に同一。
だった。
最後の項目について、ウィルはこう説明した。
「迷路を形どっている、いわゆる、仕切りの役割を担っている内壁は、驚くことに、一枚一枚の壁が、シミや大きさ、模様まで完全に同一だった」




