第9話 誰もいない村
村は、滅んでいた。
立ち並んでいたはずの家々は、黒く焼け落ち、瓦礫の山と化していた。あれほど賑やかだった通りに、人影はひとつもない。聞こえるのは、燃え残った木がぱちぱちと爆ぜる音だけ。風が運んでくるのは、焦げた匂いと、死の匂いだった。
「父さん……?」
かすれた声で、ルカは父を呼んだ。返事はない。
家の前まで来たとき、ルカの足が止まった。そこに、父が倒れていた。地に伏したその手のそばには、あの剣が転がっていた。父は、最後まで戦ったのだ。村を、そして我が子を守るために、たった一人で魔物の群れに立ち向かい、そして力尽きたのだ。
「父さん! 父さん!」
ルカは父にすがりついた。何度揺すっても、その体はもう動かない。冷たくなった父を抱きしめて、ルカは声をあげて泣いた。
それから、ルカはあることに気づいた。リーナ。リーナはどうなったのだろう。弾かれたように立ち上がり、ルカは幼馴染の家へと走った。瓦礫を越え、燃え跡を抜けて、ただ無我夢中で。どうか無事でいてくれと、そればかりを願いながら。
たどり着いた家の前で、ルカは崩れ落ちた。
リーナは、そこに倒れていた。その手には、小さな青い石が握りしめられていた。ルカが幼いころに贈った、あのネックレス。最期の瞬間まで、リーナはそれを離さなかった。
ルカは、何も言えなかった。ただ膝をつき、動かなくなった幼馴染のそばで、いつまでも、いつまでも泣き続けた。




