表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泣き虫勇者は今日も泣かない 〜千年前の光を継いだ落ちこぼれ、涙の数だけ強くなる〜   作者: TAKA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/61

第10話 北へ

どれほど泣いただろう。涙はもう、枯れていた。それでもルカは、ぼんやりと座り込んだまま、動くことができなかった。父も、リーナも、村のみんなも、もういない。たった一人、自分だけが生き残ってしまった。


——どうして。


その問いが、胸の奥で渦を巻いた。そして、いつしかその渦は、別の感情へと姿を変えていった。


熱い。胸の奥が、焼けるように熱い。


それは、生まれて初めて感じる怒りだった。泣き虫で、気が弱くて、いつも誰かに慰められてばかりだったルカが、生まれて初めて抱いた、激しい怒り。あの魔王が、すべてを奪った。父を、リーナを、この村のすべてを。許せない。決して、許せない。


けれど、と、ルカはこぶしを握りしめた。ここで泣き崩れているだけでは、何も変わらない。父も、リーナも、戻ってはこない。父は言った。お前はみんなの希望なのだと。生きろと。あの言葉を、無駄にするわけにはいかない。


ルカは、ふらつく足で立ち上がった。


まず、父とリーナの亡骸を、村を見渡せる丘の上へと運んだ。固い地面を、手が傷つくのもかまわず掘り起こし、二人を静かに横たえる。そして、焼け残った野に咲いていた花を摘み、その上にそっと添えた。土の前に膝をつき、ルカは両手を合わせた。


「父さん、リーナ……ありがとう。そして、ごめんね。僕、行くよ」


立ち上がったルカは、父が遺した剣を拾い上げた。ずっと握ることのできなかった、重い剣。けれどいま、その重さは、父の想いそのものに思えた。ルカは剣を背に負い、ゆっくりと北を向いた。


谷の奥に眠る、古い祠。神が待つという、その場所へ。


最後にもう一度だけ、ルカは故郷の村を振り返った。そして、二度と振り返らぬと心に決め、北へと歩き出した。剣を握ることもできなかった泣き虫の少年が、いま、自らの足で、運命へと歩き始めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ