第67話 男たちの夜
祭りの喧騒が引いた、深夜の宿。
囲炉裏の前で、ドランが一人、酒を舐めていた。そこへ、寝つけなかったらしいカイが、七つのぬいぐるみを抱えたまま降りてきて、気まずそうに向かいに座った。
「……飲むか」
「お、俺はまだ酒は……いや。……一杯だけ」
初めての酒に噎せるカイを、ドランは笑いもせずに眺めた。しばらく、火の爆ぜる音だけが続いた。口を開いたのは、カイのほうだった。
ドランの杯が、止まった。長い沈黙のあと、彼は静かに、語った。グレンの村のこと。命令に従い、村を焼いたこと。以来、剣の意味を見失って、酒に沈んでいたこと。カイは、目を伏せて聞いていた。聞き終えて、若い槍士は膝の上で拳を固め、絞り出すように言った。
「……正直、聞かなきゃよかったって、ちょっと思ってる。あんたは俺の、その……目標、だったから」
「だろうな。幻滅していい」
「でも」カイは、顔を上げた。「ラナリアであんたの剣を見た。誰も殺さないための剣ってのが、あんなに難しくて、あんなに強いなんて、知らなかった。……過去は消えないんだろ。なら、俺は、過去ごとあんたに教わる。あんたの弟子で、いさせてくれ」
ドランは、杯を呷った。それから、ぶっきらぼうに言った。
「……勝手にしろ。ただし、俺の稽古は父親のより厳しいぞ」
「望むところだ!」
「あと、その熊は明日、村の子どもらに配れ。むさい男が七匹も抱えて寝るな」
「こ、これは戦利品——」
二階の廊下で、その会話をこっそり聞いていたルカは、そっと部屋に戻った。布団に入って、天井を見ながら思う。この旅は、自分の旅のはずだった。けれど今は、五人それぞれの旅なのだと、はっきりわかる。それが、嬉しかった。




