第60話 火と鉄と
翌日から、五人は里の働き手になった。
ドランとカイは猟師たちと山へ入り、雪を掻き、獣を狩った。セラは病人の家々を回り、凍傷と流行り病を癒して歩いた。ルカは炭焼きと薪割りに汗を流した。剣より重い斧に、初日は掌が血豆だらけになった。
そしてミラは——炉場に呼ばれた。
「あんたの火、見せてみな」
バーサに命じられるまま、ミラは掌に炎を灯した。老女は、その火を、職人の目でじっと見た。
「……いい火だ。だが、まだ”怒りの火”が芯に残ってる。鍛冶の火はね、憎んじゃいけない。鉄を憎めば、鉄は割れる。……ちょうどいい、炉を手伝いな。燃料の炭が惜しい。あんたが炉になるんだ」
その日からミラは、来る日も来る日も、炉の前で火を保ち続けた。強すぎず、弱すぎず、一定の熱を、何刻も。それは魔物を焼くより、遥かに難しかった。夜、指先を震わせるミラに、バーサが黙って山羊の乳を突き出した。
「……あんた、いい目になってきたね。火ってのは、壊すためじゃなく、拵えるためにあるのさ。あたしゃ六十年、火でもって、人の暮らしを拵えてきた」
ミラは、湯気の向こうで、小さく息を呑んだ。仇を討ち終えて、空っぽだった胸。何のために戦うのか、探し続けていた答えの、輪郭のようなものが——炉の火の中に、揺れていた気がした。




