第61話 星鉄の記憶
半月が過ぎ、里に、血の気が戻った。
猟の獲物が蓄えられ、病が引き、炭窯に火が入った。約束どおり、バーサは五人を、里の最奥へと案内した。岩をくり抜いた、星鉄の宝物庫である。
黒々とした金属塊が並ぶ中、バーサは一冊の古い帳面を開いた。ホロウの鍛冶記録——千年分の。
「……あった。ここだよ」
千年前の頁に、その名はあった。『ルーカス様、御剣打ち直し。星鉄一貫目。打ち手、初代バーサ』。ルカの胸が、熱くなった。ここでも、祖先は、確かに生きていたのだ。
だが、記録には、続きがあった。当時の頭領が残した、走り書き。
『御剣を検めて、肝が冷えた。刃こぼれに非ず。剣が、内より灼けておった。あの光は、鋼をも喰う。……ならば、あの光を宿す御体は、一体どうなっておるのか。御髪の白きこと、雪の如し。齢二十歳と聞くに』
祠の水鏡で見た、ヴェイルの言葉が蘇る。——その力、お前を、喰ってるんじゃないのか。
一同が、沈黙した。セラの顔から、血の気が引いていた。ルカは、自分の手を、じっと見下ろした。この体の奥で脈打つ、あたたかい光。これが、自分を、灼いている——?
「……知ってたのかい」バーサが、静かに訊いた。
「いえ。……でも、薄々は」ルカは、顔を上げた。「それでも、進むしかないんです。この先に、答えがあるはずだから。祖先が”終わりの地”に遺したっていう、最後の手記に」
バーサは、長いことルカの眼を見つめ、それから、金槌を担ぎ上げた。
「……いいだろう。腕も心も、見せてもらった。——打つよ。千年ぶりの、勇者の剣を」




