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第59話 鍛冶の里ホロウ
石積みの家々。幾つもの煙突。だが、立ち上る煙は、数えるほどしかない。孤立のふた月で、里は食糧も燃料も、底を尽きかけていた。谷が開いたと知った里人たちは、五人を、涙と歓声で迎えた。
里長は、白髪を短く刈り込んだ、岩のような老女だった。名を、バーサ。大陸にその名を知られた、星鉄鍛冶の頭領である。
ルカが罅の入った剣を差し出し、事情を語ると、バーサはしばらく無言で刀身を検めた。それから、罅の奥に淡く残る光の粒を見て、ふん、と鼻を鳴らした。
「……並の鋼が、よくここまで保ったもんだ。愛されてるね、この剣は」
「打ち直して、いただけますか。星鉄で」
「断る」
即答だった。凍りつく一同に、バーサは続けた。
「星鉄はね、天から落ちた鉄だ。数がない。ましてや今、炉を焚く炭も、鉄を鍛える職人の飯もない。……それにね、坊や。星鉄はあたしらの決まりで、“打つに値する腕と心”にしか渡さないのさ。あんたの光とやらが本物でも、あんたって人間が本物かどうかは、まだ分からないからね」
「なら、どうすれば」
老女は、にやりと笑った。
「働きな。まずは里を、冬から救うんだ。話はそれからさ」




