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第6話 空が翳る
ルカが空を見上げたその瞬間、村の鐘が鳴り響いた。けたたましく、何度も、何度も。それは村に異変を告げる緊急の鐘だった。ルカが生まれてから、一度も鳴ったことのない音だった。
次の瞬間、空から黒い影が降ってきた。一体ではなかった。何十、何百という数の魔物が、翼を広げ、地を這い、村へとなだれ込んでくる。醜く歪んだ体、爛々と光る眼、牙の並んだ口。伝説の中だけの存在だったはずのものが、いま現実となってルカの目の前にいた。
悲鳴が上がった。逃げ惑う村人たち、倒れる人影。立ち並んだ家々に火が放たれ、炎が屋根を舐め、黒い煙が空へと立ちのぼっていく。穏やかだった村は、またたく間に地獄へと姿を変えた。
ルカは、その場から一歩も動けなかった。足が震えて、声も出ない。目の前で起きていることが、何ひとつ現実だと思えなかった。逃げなければ——頭ではわかっているのに、体はまるで石になったように固まっていた。炎の照り返しと、人々の叫びと、魔物の咆哮。そのすべてが渦を巻く中で、ルカはただ立ち尽くすことしかできなかった。




