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第53話 開戦前夜
北岸にアルドス、南岸にレンドル。合わせて数万。都は息を潜め、明朝、中央島で開かれる最後の会談だけが、細い糸のように残された。
策は、決まった。セラの立場で、教団の立会人として会談に潜り込む。ルカが王の魅了を光で払い、光の眼と、保護した証人と、実行役の騎士とで、偽りの糸を白日の下に引きずり出す。前夜のうちに、ドランとカイは実行役の騎士を密かに押さえ、縛り上げていた。
出立前の夜、桟橋に、ルカとミラは並んで座っていた。
「……ねえ。仇は、討ったのよ。なのに私、まだここにいる」ミラは、湖を見たまま言った。「何のために戦えばいいのか、まだ、わかんないままなんだ」
「見つかるまで、一緒に探しましょう」ルカは、静かに答えた。「……僕も、まだ、探してる途中だから」
ミラは、ふ、と息だけで笑った。「……ほんと、変なやつ」
その少し離れた場所で、ドランは剣を研ぎながら、カイに言った。
「明日は、人を斬らずに済むと思うな。——だが、殺すな。眠らせろ。今日からそれが、お前の槍の使い方だ」
カイは、家伝の型を思い返しながら、深く、頷いた。




