第45話 巨人狩り
大斧が、風を千切って唸る。ルカはそれを、躱した。躱せた。体が羽根のように軽い。振り抜かれる剛撃の軌道が、見える。光をまとった剣が、巨人の腕に初めて深々と喰い込んだ。
「ハハッ!! 効くぜえ!!」
痛みすら、この魔人にはご馳走らしかった。乱打が広場を砕く。ルカ一人では、まだ押し切れない。だが——もう、一人ではなかった。
「目えつぶってな、化け物!!」
ミラの炎が針のように細く絞られ、巨人の両眼を正確に灼いた。憎しみの業火ではない、意志で研がれた火だった。呻いて仰け反った、その膝裏へ。
「膝の腱——貰った!!」
ドランの剣が、兵士の精密さで走った。巨体が、がくりと沈む。片膝をついた巨人の心臓の高さが、ルカの正面に来た。遠くから、セラの祈りがルカの傷を癒し、その背を押した。
ルカは、剣を引き絞った。父の剣に、祖先の光のすべてを注ぐ。刃が、太陽のように燃え上がった。
「これは……父さんと、リーナと、ミラの町と——みんなの、分だあああっ!!」
金色の刺突が、巨人の胸を、貫いた。
長い静寂のあと、ベルガは自分の胸を見下ろし——笑った。心底、愉しそうに。
「……ハ……ハハ……いいねえ……ガキに喰われるたァ……最高の獲物だったぜ、俺は……」
血を吐きながら、巨人は最後にルカを見た。
「……だがよ……ガルドスの爺は……俺とは、モノが違うぜ……精々、足掻いて……みせな……」
音を立てて、山が崩れ落ちた。主を失った魔物の軍勢が、潮のように都から引いていく。割れた城壁の上で誰かが叫び、勝ち鬨は瞬く間に、都全体へと広がっていった。




