第4話 君がいれば
稽古のあと、川辺に座り込んで膝を抱えていると、聞き慣れた足音が近づいてきた。
「また泣いてたの、ルカ」
顔を上げると、幼馴染のリーナが、呆れたように、けれど優しく笑って立っていた。ルカが物心ついたころからずっとそばにいてくれた、いちばん大切な友だちだ。
「だって……父さんみたいに、ぜんぜん強くなれないんだ。僕なんかが勇者の子孫だなんて、きっと何かの間違いだよ」
うつむくルカの隣に、リーナはそっと腰を下ろした。
「ねえ、ルカ。今は平和なんだよ。魔王なんてとっくの昔にいなくなって、もう千年も経ってる。勇者の子孫だからって、無理に強くならなくたっていいじゃない。弱くたって、大丈夫だよ」
リーナの言葉は、いつもルカの胸につかえていたものを、ふっと軽くしてくれた。彼女がそばにいてくれるだけで、自分の弱さも少しだけ許せる気がした。
ふと、ルカはポケットから小さな包みを取り出した。先日の市で、なけなしのお小遣いをはたいて買った、青い石のネックレスだった。
「これ……リーナに。いつも、ありがとう」
リーナは目を丸くしたあと、嬉しそうに頬を染めて、それを首にかけた。青い石が、午後の光を受けてきらりと輝く。
「一生、大事にするね」
そう言って笑うリーナの横顔を、ルカは今でもはっきりと覚えている。あの穏やかな日々が、まさかこんなにもあっけなく終わってしまうなんて——このときはまだ、知るよしもなかったのだ。




