第34話 同じ道、別々の心
「同じ方向なだけ」——そう言い張るミラとの、奇妙な道連れの旅が始まった。
ミラの戦い方は、見ていて危なっかしいものだった。魔物を見つけると、真っ先に一人で突っ込んでいく。避けられるはずの攻撃を避けず、身を焼かれながらでも、敵を燃やし尽くす。まるで、自分の命を、少しも惜しんでいないかのように。
その日の小競り合いでも、そうだった。ミラの背後に回り込んだ魔物に気づき、ルカはとっさに割って入って、刃で受けた。魔物はドランが仕留めたが、直後、ミラがルカに掴みかからんばかりに、怒鳴った。
「邪魔よ! 私を守るな! 頼んでない!」
「で、でも、後ろから——」
「あの子とやらの代わりに、私を守った気にならないで!」
その言葉は、刃のように、ルカの胸に刺さった。図星、だったからだ。ルカはうつむき、何も言い返せなかった。ミラは荒々しく踵を返し、先へ行ってしまう。
「……ルカ。あの嬢ちゃんはな、お前と同じ、穴の底にいる」低い声だった。「大事なもんを、根こそぎ持ってかれた人間の穴だ。ただ、お前は祠で、底から登りはじめた。あいつはまだ、底にうずくまって、憎しみの火を焚いて、暖を取ってる。……ああやって燃やし続けてなきゃ、凍え死んじまうのさ」
ルカは、鍋のスープをよそい、そっとミラのそばに置いた。「いらない」と、背中を向けたまま返事がある。けれど、しばらくして戻ってみると、器は、空になっていた。
翌日の道すがら、ふいに、ミラのほうから口を開いた。
「……ねえ。あんた、弱いくせに、なんで戦えるの。震えてるくせに、なんで逃げないの」
ルカは、少し考えてから、答えた。
「弱いから、です。弱いまま隠れてて、みんなを失ったから。……もう、誰かが死ぬのを、隠れて聞いてるだけなのは、いやなんです」
ミラは、それきり、黙り込んだ。ただ、その横顔から、ほんのわずかだけ、棘が抜けたように見えた。




