第24話 砕ける心
ただ、虚ろな目で、天井を見上げていた。立ち上がる気力も、湧かなかった。どうせ、また、繰り返されるのだ。父が死に、リーナが死に、自分が罵られる、あの地獄が。何をしても、変わらないのだ。
「ルカ、朝餉ができたぞ」
父の声がしても、ルカは、動かなかった。
何の意味があるだろう。会いに行けば、また、失うだけ。あの笑顔を見れば、また、それが奪われる瞬間を、見せられるだけ。
それでも、ルカは、ふらふらと立ち上がった。体が、勝手に、戸へと向かう。会いたく、ないのに。会いたくて、たまらない。その矛盾が、ルカを引き裂いていた。
その日も、村は燃えた。父は死に、リーナは死んだ。そして、二人は、ルカを罵った。お前のせいだ、と。お前が弱いからだ、と。生まれてこなければよかった、と。
ルカは、もう、泣くことすら、できなくなっていた。
もう、いい。もう、終わりにしたい。この、終わらない地獄から、解放されたい。心が砕ければ、ここから出られないと、神は言った。なら——いっそ、砕けてしまえば。すべて、楽になるのではないか。
抗うことを、やめてしまえばいい。この幻に、呑まれてしまえばいい。そうすれば、もう、何も、感じなくて済む。
ルカの心の、最後の灯火が、消えかけた。
絶望が、その黒い手を、ルカの魂へと、伸ばす。あと、わずか。あと、ほんの少しで、ルカの心は、完全に、砕け散る——
その、刹那だった。
ルカの脳裏に、ふいに、ひとつの声が、よみがえった。
幻の罵声ではない。すり減った記憶の、いちばん奥から、響いてきた、本当の声。




