表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泣き虫勇者は今日も泣かない 〜千年前の光を継いだ落ちこぼれ、涙の数だけ強くなる〜   作者: TAKA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/61

第23話 罵る声

幾度、繰り返しただろう。もはや、ルカには数えることもできなかった。


ルカの心は、すり減っていった。幸せな朝も、もう、喜びをもたらさなかった。それは、これから始まる地獄の、合図でしかなかったから。父の笑顔も、リーナの声も、見るたびに、聞くたびに、ルカの胸を、ただ抉るばかりだった。


そして、試練は、さらに残酷な姿を、現しはじめた。


その日、村が燃え、リーナが斬られ、ルカがその亡骸にすがりついていたとき。


「……どうして、助けてくれなかったの」


冷たい声が、聞こえた。ルカは、はっと顔を上げた。


死んだはずのリーナが、目を開けて、ルカを見ていた。けれど、その目に、いつものあたたかさは、なかった。


「ルカが、弱いから」リーナの唇が、紡いだ。「ルカが、弱虫で、泣き虫で、何もできないから。だから、わたしは、死んだの」


「ち、違う……僕は」


「ねえ、どうしてルカだけ、生き残ったの?」リーナの声が、責めるように、重なっていく。「ルカなんかより、もっと生きるべき人が、たくさんいたのに。どうして、一番弱いルカだけが、のうのうと生きてるの?」


ルカの胸に、その言葉が、突き刺さった。


それは、ルカが、心の奥底で、ずっと自分を責め続けてきた言葉だった。なぜ、自分だけが助かったのか。なぜ、もっと強くなれなかったのか。その、決して口にできなかった罪悪感を、リーナの姿をした幻が、容赦なく、えぐり出していく。


「ルカのせいだ」


倒れていたはずの父も、立ち上がり、ルカを見下ろした。その目は、軽蔑に満ちていた。


「お前が、勇者の血を継ぎながら、これほど無力でなければ。村は、滅ばずに済んだ。リーナも、死なずに済んだ。みんな、お前のせいで、死んだんだ」


「やめて……やめてください、父さん」


「お前など、生まれてこなければよかった」


その一言が、ルカの心を、深く、深く、抉った。


幻だと、わかっている。本当の父が、リーナが、こんなことを言うはずがない。二人は、最期まで、自分を愛してくれた。それは、わかっている。


それでも——その言葉は、ルカが、自分自身に向け続けてきた呪いと、寸分たがわなかった。だからこそ、毒のように、心の奥まで染み込んでいく。幻の言葉なのに。まやかしの声なのに。その痛みだけが、どうしようもなく、本物だった。


「ごめんなさい……ごめんなさい……」


ルカは、ただ、うずくまって、謝り続けた。誰にともなく。繰り返される地獄の中で、ルカの心は、少しずつ、確実に、砕けはじめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ