表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泣き虫勇者は今日も泣かない 〜千年前の光を継いだ落ちこぼれ、涙の数だけ強くなる〜   作者: TAKA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/64

第21話 炎、ふたたび

その日の昼下がりだった。


ルカが、リーナと並んで川辺を歩いていたとき。空が、ふいに翳った。


澄んだ青空に、墨のような黒い染みが広がっていく。みるみる大きくなり、村全体を覆っていく。昼が、夕暮れのように暗くなる。


ルカの全身から、血の気が引いた。


——これは。この光景は。


「ま、まさか」


次の瞬間、村の鐘が、けたたましく鳴り響いた。そして、空から、黒い影が、無数に降ってくる。魔物の群れ。あの日と、寸分たがわぬ、悪夢の再来だった。


「いやだ……いやだ! やめてくれ!」


ルカは、叫んだ。これは幻のはずだ。幻のはずなのに。なぜ、よりにもよって、この光景を、もう一度見せるのか。


魔物たちが、村へとなだれ込んでいく。家々に火が放たれ、悲鳴が上がる。逃げ惑う村人たち。すべてが、あの日のままに、繰り返されていく。


「ルカ! こっちよ、逃げて!」


リーナが、ルカの手を引いた。けれど、ルカの足は、また、あのときと同じように、凍りついて動かなかった。


——逃げなきゃ。今度こそ。今度こそ、リーナを、守らなきゃ。


頭ではわかっているのに、体が、いうことをきかない。恐怖が、ルカを、その場に縫いつける。


そのとき。一体の魔物が、こちらに気づいた。赤い眼が、リーナを捉える。


「リーナ!」


ルカが叫んだときには、もう遅かった。


魔物が、跳んだ。鋭い爪が、リーナの体を——


「あ……」


リーナの手から、ルカの手が、するりと離れた。崩れ落ちるリーナ。その手から、青い石のネックレスが、こぼれ落ちる。


「リーナ! リーナッ!」


ルカは、倒れたリーナに、すがりついた。けれど、その目は、もう、何も映してはいなかった。あたたかかった体が、見る間に、冷たくなっていく。


「いやだ……いやだ、リーナ、目を開けて、お願いだから……!」


涙が、止まらなかった。また、失った。目の前で。守れなかった。あのときと、同じように。


「ルカ……」


かすれた声に、ルカは振り向いた。父が、剣を手に、よろめきながら立っていた。その体は、いくつもの傷から、血を流している。


「父さん!」


「逃げ、ろ……ルカ……お前、だけでも……」


そう言い残して、父もまた、地に崩れ落ちた。動かなくなった。


ルカは、その場に、へたり込んだ。父も、リーナも、また、死んだ。自分は、また、何もできなかった。ただ、見ていることしか。


「うわあああああ——!」


燃え盛る村の中で、ルカの慟哭が、響き渡った。


そして——その意識が、絶望の闇に呑まれた、その瞬間。


世界が、ふつりと、途切れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ