第17話 剣を教わる
ヴェルンを発ってから、ルカとドランは、北へ北へと旅を続けた。
道中で魔物に出くわすことは、相変わらず幾度もあった。けれど、もうルカは一人ではなかった。魔物が現れるたび、ドランは危なげなくそれを斬り伏せ、ルカを守った。その剣さばきは、見るたびにルカを驚かせた。無駄がなく、迷いがなく、まるで剣がドランの体の一部であるかのようだった。一人きりだったあのころの、心細さと恐怖が嘘のようだった。
野営の合間に、ドランはルカに剣の手ほどきをした。
「腰が高い。もっと落とせ。剣ってのはな、腕で振るもんじゃない。足と腰で振るんだ」
ドランの指導は、厳しかった。父の稽古を思い出して、ルカは何度も涙ぐみそうになった。けれど、もう投げ出すわけにはいかなかった。あの街で、自分の無力さを、いやというほど思い知らされたのだから。ルカは歯を食いしばり、何度も剣を振った。
とはいえ、ルカの上達は、お世辞にも早いとは言えなかった。一日剣を振っても、次の日には腕が上がらなくなる。素振りの形すら、なかなか身につかない。
「まあ、一朝一夕でどうにかなるもんでもないさ」ドランは、そんなルカを見て、苦笑した。「だが、お前には妙なところがある。下手くそなくせに、目だけは死んでない。それだけは、見込みがあるかもしれんな」
焚き火を囲んだある夜、ルカは思いきって尋ねた。
「ドランさんは、どうして……僕なんかについてきてくれたんですか」
ドランは、しばらく火を見つめていた。やがて、ぽつりと答えた。
「さあな。柄にもないことをしてる自覚はあるさ」ドランは、ふっと笑った。「ただ……守るべきものを見失った男が、たまたま、何かを守ろうと必死な子どもに出くわした。それだけのことかもしれん」
その言葉の意味を、ルカは深くは尋ねなかった。けれど、その夜の焚き火は、いつもより少しだけ、あたたかく感じられた。




