第14話 戦火と難民
門をくぐった先に広がっていたのは、ルカの想像とはまるで違う光景だった。
大きな街と聞いて、ルカは賑やかで華やかな場所を思い描いていた。けれど目の前にあったのは、疲れ果てた人々で埋め尽くされた、雑然とした通りだった。道の端には、粗末な布をかぶせただけの仮小屋がいくつも並び、その軒先に、痩せこけた大人や子どもたちが、力なく座り込んでいる。
行き交う人々の話に耳を傾けるうちに、ルカは少しずつ、この街の様子を理解していった。彼らの多くは、ルカと同じように、魔物に故郷を追われた者たちだった。そしてもう一つ——人間同士の戦の話も、あちこちで囁かれていた。
魔王が倒されてから千年、人間の大陸では、国と国とが領土を奪い合う争いが続いていたのだという。そこへ、突如として魔物が各地に現れはじめた。戦と魔物、その二つに追われ、住む場所を失った人々が、まだ城壁の堅いこのヴェルンへと、すがるように流れ込んできているのだった。
ルカは、立ち尽くした。
奪われたのは、自分だけではない。ここにいる誰もが、大切な何かを失い、行き場をなくしている。世界そのものが、血を流しているのだ。自分の悲しみは、この大きな苦しみの、ほんの一粒にすぎなかった。その事実は、ルカの胸を締めつけると同時に、ぼんやりと抱いていた怒りに、もっと大きな意味を与えはじめていた。
とはいえ、感傷に浸っている余裕はなかった。ルカの腹は、もう限界だった。何日もまともに食べていない。けれど、手元には一枚の銅貨もない。どこへ行けばいいのかも、誰を頼ればいいのかもわからず、ルカはあてもなく、人混みの中をさまよった。
通りの先に、一軒の酒場があった。中からは、酒のにおいと、男たちのざわめきが漏れてくる。ふらつく足でその前を通りかかったとき、ルカの視界が、ぐらりと揺れた。空腹と疲労が、限界を超えたのだ。ルカはそのまま、酒場の戸口の脇に、崩れるように座り込んでしまった。




