第13話 城壁の街
それから、さらに数日が過ぎた。
道中、ルカは木の実をかじり、谷川の水で喉を潤しながら、ふらつく足でひたすら北を目指した。空腹と疲れで、意識は何度も遠のきかけた。それでも歩き続けた先で、ルカはついに、舗装された一本の街道を見つけた。人の手で整えられた道。その先には、きっと人がいる。
街道をたどっていくと、やがて前方に、高い石の城壁がそびえているのが見えてきた。街だ。ルカが生まれて初めて目にする、大きな街だった。村しか知らないルカにとって、その壁の高さも、門の大きさも、何もかもが圧倒されるものだった。
門の前には、武装した兵士たちが立っていた。鎧をまとい、槍を手にした彼らの目は、街道を行き交う人々に鋭く向けられている。どこか、ぴりぴりとした空気が漂っていた。
ルカが門に近づくと、すぐに兵士の一人が槍を構え、行く手をふさいだ。
「止まれ。お前、どこの者だ」
兵士の目が、ルカの全身を値踏みするように見た。泥にまみれた服、やつれた顔、そして——背に負った剣。子どもには不釣り合いなその剣に、兵士の表情がいっそう険しくなった。
「子どもがこんなところを一人で、しかも剣を背負ってか。怪しいな。名と、ここへ来た用件を言え」
ルカは、とっさに言葉が出てこなかった。本当のことを——勇者の末裔で、神に会いに行く途中だなどと言って、信じてもらえるはずがない。
「ぼ、僕の村が……魔物に、襲われて」ルカは、絞り出すように言った。「みんな、死んでしまって。僕だけ、逃げてきたんです」
兵士たちは、顔を見合わせた。その言葉に、嘘の色がないことを感じ取ったのだろう。あるいは——同じような話を、もう何度も聞いてきたのかもしれない。
「……またか」
年かさの兵士が、低くつぶやいた。そして、わずかに表情をやわらげると、槍を引いた。
「いいだろう、通れ。だが、街の中で揉め事を起こせばただじゃおかん。その剣も、めったなことで抜くなよ」
ルカは小さく頭を下げ、おそるおそる門をくぐった。こうしてルカは、ヴェルンと呼ばれるその街へと、足を踏み入れたのだった。




