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礼金無双のマンションオーナー ~相場よりも安い賃料でカモを釣り、住人の秘密を暴いて即追い出す~全室隠しカメラ完備ですが、覗きが趣味ではありません  作者: 団田図
第5章 女性アイドル研究生 合宿 4名

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第24話 足元から崩れる夢の城

 インターネットという名の海が、赤黒く染まるのに時間はかからなかった。


 数分前まで『尊い』『天使』という言葉で埋め尽くされていたSNSのタイムラインは、今や阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。

 トレンドワードは一瞬にして塗り替えられた。

 『#研究生の正体』

 『#死角の衝撃』

 『#お掃除ロボのえぐいアングル』

 『#性格ブス』


 発端は、とある匿名配信者が投稿しているライブ中継だった。

 そこには、床すれすれのローアングルから見上げた、アイドルたちの醜悪な本性が映し出されていた。


「え、これ何? 放送事故?」

「メインカメラ止まってる間に、ロボット掃除機のカメラがハッキングされてるっぽいw」

「うわ、ミウちゃんがタバコ吸って鼻から煙はいてる……幻滅」

「カレンの顔怖すぎ。般若じゃん」

「『ファンはATM』って言った? 今言ったよな?」

「床に落ちてるの台本じゃね? 『感動の涙』って書いてあるぞ」


 疑惑は確信へ、そして確信は怒りへと変わる。

 今まで彼女たちの「純粋な涙」や「固い絆」に感動し、投げ銭をしていたファンたちの愛は、裏切られた反動で、最も凶暴な憎悪の刃となって彼女たちに襲いかかろうとしていた。


 しかし、当の四人はその「炎上」を知る由もなかった。

 なぜなら、この最終日の昼、マネージャーによってスマホを没収されていたからだ。

「最近、台本の覚えが悪い。気が散る原因は断つ」

 そう言われて取り上げられた通信機器。

 今の彼女たちは、外界からの情報を遮断された孤島の住人だった。


 リビングには、相変わらず四人の罵声と、それを世界に配信し続ける『サンバ』の微かなモーター音だけが響いている。


「あーあ、休憩終わりまであと一分かよ。マジでダルい」

 ミウが不機嫌そうに吐き捨て、テーブルの上の空き缶をゴミ箱に投げ入れた。

「顔作らなきゃ。……ねえ、私のマスカラ落ちてない?」

 リナが鏡を見て、慌てて化粧を直す。

「大丈夫よ。それよりサクラ、あんた次はトチるんじゃないわよ」

 カレンが般若の面を剥ぎ取り、プロの早業で「聖女」の仮面を被り直す。

「わかってますよぉ。……よし、スイッチオン」


 サクラが頬をパンと叩き、口角を限界まで吊り上げた。


 3、2、1……。


 壁のメインカメラの赤いランプが、再び点灯した。


「――はいっ! メンテ終わりでーす! みんな、待っててくれてありがとー!」


 カレンの透き通るような声が、リビングに響き渡った。

 四人はソファにギュッと身を寄せ合い、カメラに向かって花が咲くような笑顔を振りまいた。

 一秒前まで「死ね」「邪魔」と罵り合っていたとは到底思えない、完璧なチームワーク。

 しかし、そのプロ意識こそが、今の状況ではあまりにも残酷な喜劇だった。


 彼女たちは気づいていない。

 画面の向こうの数十万人が、今まさに、彼女たちの足元を這い回る『サンバ』のカメラ映像と、この白々しい「表の顔」を二画面同時に見比べ、戦慄していることを。


「後半戦も、私たち全力で頑張ります! 応援よろしくお願いしまーす!」

 ミウが可愛らしくウインクをして、カメラ横に設置されたタブレット端末へと視線を移した。

 リアルタイムのコメントを読み上げ、ファンと交流するコーナーだ。


「さーて、みんなからのコメント、読んじゃおうかな……え?」


 ミウの笑顔が、凍りついた。

 流れるコメントの速さが、異常だった。

 そして、その内容が、想定していた「応援」とはあまりにもかけ離れていた。


『よくも騙したな』

『詐欺集団』

『カレンの生足最高でしたw』

『もう演技しなくていいよ、全部バレてるから』

『醜い』

『金返せ』

『解散しろ!ってまだ結成前かw』


 言葉の意味が理解できず、ミウは口をパクパクと開閉させた。

「え……なに、これ……? 荒らし……?」

「どうしたのミウちゃん? そんな怖い顔して」

 カレンが横から覗き込み、そして絶句した。

『リンク先の配信見ろよ』

『足元の掃除機に挨拶しろ』

『裏の顔怖すぎ』


 カレンの視線が、無意識に足元へと落ちる。

 そこには、白いロボット掃除機『サンバ』が、ジッと彼女たちを見上げていた。

 その巨大な一つ目のようなレンズが、青白く光っている。


「ひっ……!」

 カレンが短い悲鳴を上げ、後ずさった。

 その瞬間、彼女の脳裏ですべてが繋がった。

 休憩中。散乱した部屋。罵詈雑言。そして、勝手に動き回っていたこの機械。


「嘘……全部、流れてたの……?」

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