164 目標発見
「ヤベッ! もう始まってる!!」
時は、女神軍が攻めている町跡から1キロ以上離れた高台にシモンたちが登った直後。シモンが遠くを見据えると煙が上がっていたので、戦闘準備を急ぐ。
「えぇ~。ちょっとは休ませてや~」
「プックは休んでていいぞ。ユーチェ、イスと双眼鏡だけ持って来い」
「は~い」
「それはそれで寂しない?」
急いで高台に登ったのだ。疲れるのは当然。しかしプックは文句がそのまま通ってしまったから、いらない子と言われたみたいで納得がいかない。でも、大の字になってしっかり休んでる。
その横では、シモンはスナイパーライフルのスコープで。ユーチェは双眼鏡を使って戦場を見ていた。
「いまは~……遠くから遠距離攻撃の撃ち合いか。始まってすぐってところだな」
「うむ。飛ばした甲斐があったのう」
「俺たちが気にしなくてはいけないのは、勇者パーティと蒼き群雄。蒼き群雄は迂回して東側の外壁に向かうと言ってたから~……ヤコは蒼き群雄の顔はわかるか?」
「うむ。だが、森の中を移動しているから見付かるかどうか……」
「森から出て来るところを張っておいてくれたらいい」
ヤコビーネに指示を出したら次はユーチェ。
「ユーチェは俺と一緒に勇者パーティを探してくれ」
「あの中からどすか?」
「どうせあの趣味の悪い金ピカの鎧を着てるからすぐ見付かるだろ」
「あ、そっか。みんな成金みたいな格好どしたな~」
勇者パーティは個性的な装備なので2人で探していたら、プックの疲れはとれた。
「あーしも探そか?」
「プックは攻撃準備しておいてくれ。念の為10号もな」
「おお~。今回も愛娘が火を吹くで~」
「こないだは息子って言ってたぞ?」
プックは返事をせずに作業を始めたので致し方ない。見習い騎士も何かしたいと言うので、シモンも忙しいからだ。
見習い騎士は、あまり性能のよくない望遠鏡で勇者パーティと蒼き群雄探し。伝令エルフは女神軍の本部に到着したことを報告させ、終わったら見習い騎士と同じことをしてもらう。
「アレちゃいますか?」
そうこうしていたら、ユーチェが勇者パーティを見付けた。
「ああ~。本当だな。真面目にやってる……か?」
シモンも照準を合わせたら、勇者パーティの全員を確認。しかし、攻撃をしているのは賢者トモヤだけで、他は座ってお喋りしているだけだ。
「どこじゃ?」
「あーしにも教えてや~」
ヤコビーネとプックも興味津々。蒼き群雄のことは見習い騎士に任せて戦場を凝視する。
「なんじゃあのショボイ魔法は。本当にしごかれたのか?」
「態度悪いでんな~。他の人、みんな立っとるのに」
すると、勇者パーティに非難囂々。シモンもユーチェも加わって悪口言いまくってる。見習い騎士たちはあまり勇者パーティのことを知らないのか「女神様のバチが当たるんじゃね?」とヒソヒソやっていた。
「蒼き群雄は見付かったか?」
「いえ。まだです」
「じゃあ、そのまま数人で広範囲を見張っていてくれ。ユーチェたちは勇者パーティの動向の見張りな。何か動きがあったら報告してくれ。俺は邪神の使いを探す」
国王直属秘密部隊の仕事は勇者パーティの見張りと蒼き群雄の援護だが、いまは動きがないのでシモンも自由に動ける。シモンは南側の外壁に照準を合わせ、邪神の使いと厄介そうな敵もついでに探すのであった。
「どうじゃ? 邪神の使いはいたか??」
国王直属秘密部隊が高台に到着してから1時間。女神軍が膠着状態を続けていたら、ヤコビーネはシモンの後ろに立った。
「2匹、それっぽいのは発見した。角度が悪いから自信はないけど」
「前は4匹いたのに少ないのう……下で待機してるとかか」
「かもな。最悪、2匹は消してもいいか……」
「うむ。少なくしておいてやったほうが、蒼き群雄が動きやすかろう」
シモンとヤコビーネが追加の作戦を考えていると、見習い騎士が大声をあげた。
「いた! いました! 蒼き群雄です!!」
東側の外壁、最北辺りの森から蒼き群雄が出て来たのだ。
「どこだ!?」
なのでシモンは食い付きまくりだ。
「あそこらへんです」
「本当だ……蒼き群雄だ……みんな、立派になって……」
「親か」
「親じゃな」
「パパどすね」
そしてスコープで岩陰に隠れる蒼き群雄の1人1人を見て涙ぐむので、プックたちにツッコまれまくりだ。
「うるせぇな~。それより勇者パーティ見てろよ」
「あーし、なんだかんだで蒼き群雄初めて見るねん。どこにおるんやろ~?」
「恋敵はどれや~??」
「お前たち、蒼き群雄は我らが追う。勇者パーティを見張っておれ」
さらにプックとユーチェは職務放棄。なのでヤコビーネが指示を出して、自分も蒼き群雄にロックオンだ。
「外壁の上に、見張りがいるみたいじゃぞ?」
ただ、ヤコビーネはそこまで蒼き群雄に思い入れがないので、作戦を優先して報告してくれた。
「とりあえず排除してやるか。いや……カティンカの活躍の場だな。きっとサクッと魔法でやっつけるんだろうな~。それを見るべきだな。うん」
「なんでやねん。手伝ったりぃや」
「カティンカは獲物を奪うと怒るんだ。あの頃はよくケンカしたな~」
「その顔なんどす? ま、まさか……」
「あのちっこいのはシモンはんの好みちゃうやろ」
でも、シモンたちは脱線しまくり。昔話まで披露するので、援護をするかどうかは決まりそうにない。
ヤコビーネも呆れ果てていたが、いまは戦闘中。いい加減にしろと声を掛けようとしたその時……
「消えた……勇者パーティが消えました!!」
突如、見習い騎士は勇者パーティを見失ったのであった……




