161 新しい任務
シモンの知りたいことを聞けたところで、息を切らした兵士が部屋の準備ができたと呼びに来たので、シモンたち国王直属秘密部隊はそちらへ移動。
部屋でダラダラしていたら、超豪華な食事が運ばれて来た。
皆が食べ始めると、シモンだけ外に出て炊事兵を捕まえる。自分たちだけこんなに豪華な食事は申し訳ないと、ヤコビーネ以外は普通の食事にしてほしいみたいだ。
翌朝になると、シモンはまた1人で行動。本部まで行き、ちょっと偉そうな人に鍛冶場を借りられないかと交渉する。礼儀や食事の件もあるから好感触だ。
滞在場所に戻ったら、炊事兵とヤコビーネが揉めていたので間に入る。ヤコビーネ以外の朝食が質素になっていたから怒ってたんだって。
ならば多数決。その結果、2対7で普通の食事組が勝利だ。みんな豪華な食事は申し訳なかったみたいだけど、裏切った1人は見習い騎士だった……
ヤコビーネがその見習い騎士の分も頼んだら、「間違えました~~~!」と必死の言い訳。自分だけ豪華な食事をしている姿を想像したら、胃がキリキリしたんだって。
ヤコビーネは強心臓というか強胃袋というか、1人だけ豪華な食事を取っていてもまったく気にした素振りはないな。
朝食後は、プーシーユーは銃の整備。見習い騎士は弾込め。ヤコビーネは出掛けたので和気あいあいとやってるね。
そうこうしていたら、兵士がやって来て鍛冶場の使用許可が出たとのこと。ヤコビーネ効果で優先的に使わせてくれるらしい。またシモンは謝ってました。
お昼になるとヤコビーネが戻って来てランチ。ヤコビーネは豪華な食事ではなく血が滴る肉を頬張っていたので何故かと聞いたところ、シモンたちに合わせるのをやめたらしい。
わざわざ自分で料理の注文をして来たそうだ。お肉は最高品質らしいけど、見習い騎士は食欲減退していたよ。
食後はプーシーユーだけでブラブラ。駐屯所とは聞いていたが、一般人がやっているお店もあるから驚いていた。
「出稼ぎってヤツじゃな」
「「「ッ!?」」」
あとヤコビーネがついて来てたから、そっちのほうがビックリだ。
「お昼寝するとか言ってなかった?」
「そうしようと思ったんじゃが、妾も気になってのう」
「だったら声を掛けてくれ。頼むから」
「おっ。サキュバスが歩いておるぞ」
「え? どこ??」
サキュバスを出されては、苦情はどこへその。シモンはめっちゃ食い付いてるよ。
「サキュバスって、九層の住民じゃなかったっけ?」
「その認識で間違いない。うちが派遣してやってるんじゃ。有料じゃがな」
「あぁ~……そりゃ必要だよな」
「うむ。危険な地じゃ。夢にうなされる者もおるからのう。ちょっとでもいい夢を見れば、心も軽くなるじゃろう」
「あっ! そうそう! それ! 俺もそう思ってた~」
シモンが思ったサキュバスの使い道は、肉体関係。夢という発想はなかったから乗っかったけど、そのせいでプックとユーチェが疑惑の目を向けてるよ。
「お主たちも疲れを取ってもらって来い。妾が口を利いてやるからな」
「「「は~い」」」
なのでヤコビーネの助け船。プックとユーチェはエステが受けられると後に続く。
お店は男性用と女性用に分かれていたので、シモンはニヤリ。ヤコビーネの権威を使って、夢ではないコースを堪能するのであった。
気分スッキリ。帰って来たプーシーユーがペッカペカに綺麗になっていたから見習い騎士はどうしたモノかと聞いたら、羨望の眼差し。
何か言われたら困るので、シモンは見習い騎士を連れてヒソヒソ話だ。
「騎士団って給料安いのか?」
「まだ見習いですんで……」
「しゃあねぇ。奢ってやる」
「いいんですか!?」
「大声出すな。プックたちにバレるだろ。鮮血女王の下僕と同じメニューと言えば、たぶん現実の世界に連れて行ってくれる。あとで行って来い」
「「「「「はいっ」」」」」
後輩には太っ腹なシモン。見習い騎士たちはこの日からシモンのことを、アニキと呼び出したのであったとさ。
翌朝、シモンがお肌ツルンツルンの見習い騎士に囲まれて「アニキ、アニキ」と慕われていたからプックとユーチェは不思議。シモンは迷惑そうにしていたから聞いてみたら、わからないとか言ってた。
確かにシモンは子供から妙に慕われるから、そのせいかと2人は思ってた。いまだにサキュバスのサービスが男性と女性では違うと気付いてないみたいだ。ヤコビーネはいつバレるかとニヤニヤ見てるよ。
朝食を終えて今日は何をしようかと話をしたら、プックは銃の整備で鍛冶場に行くとのこと。簡単な整備だけでは少し気になるところがあったそうだ。
すぐ戻って来るらしいから、昼まではダラダラして何をするかを話し合おうと考えていたら、兵士がやって来て下僕が呼び出された。
誰のことかと思ったらシモン。1人だけで会議室に来てほしいと耳打ちされたので、シモンは気持ちを汲んで向かう。ヤコビーネがいると怖いんだね。
会議室には参謀が1人。参謀はシモンの後ろを念入りに確認してから、座るように促した。
「新しい任務ですか?」
「ああ。君だけのほうが話がしやすそうだから1人で来てもらったのだ」
「そう思いました。はは」
思った通り。参謀もわかってくれてよかったと空笑いだ。
「急なことだが、国王直属秘密部隊に要請が入った」
「あ、はい。いつもそんなもんなんで慣れっこです。任せてください」
シモンが驚きもせずに軽く返事するから参謀は不思議に思ったが、そのまま続ける。
「君たちには蒼き群雄の部隊に合流してもらう。任務内容は勇者パーティの見張りだ……どうした? 表情がコロコロ変わったぞ??」
蒼き群雄と聞いたシモンは恋愛中の乙女みたいな顔になったのに、勇者パーティと聞いたらしかめっ面になったので、これには参謀も無視できなかった。
「いや、なんでもないと言いたいんですが……」
「勇者パーティか? 何かやられたのか??」
「やられたというかやったというか……」
「なんだというのだ。蒼き群雄の時には目を輝かせるし……そもそも君は、いったい何者なんだ??」
シモンがしどろもどろな受け答えをしたせいで、参謀は聞くのを我慢していたことを質問してしまった。
シモンは黙って頭をガシガシ掻くと、覚悟を決める。
「秘密にしてくださいね?」
「ああ。王命だから、必ず守る」
「俺はプーシーユーのシモンです」
「プーシーユーのシモン……あの厄災バスターズの??」
「ここではそんなカッコイイ名前で呼ばれてるんだ。たはは」
今度は照れて頭を掻くシモン。
「黙っているのは、勇者パーティに恨まれているからと、元蒼き群雄だからです」
「百発百中のシモンか!?」
「そうなんですよ~。何故かみんな、俺のこと知ってるんですよ~」
今度は苦笑いで頭掻き掻きだ。
「それは言えないワケだな」
「わかってくれます? 特に勇者パーティは、何度も俺のことを殺しに来るし」
「そちらではない。百発百中のほうだ。冒険者たちは、シモンが来たら血祭りに上げてやると騒いでいたんだ」
「は? 血祭り? 冒険者が??」
「ああ。かなり強いと思われてるぞ」
「やっぱり~~~!!」
シモン、イヤな予感またしても正解。蒼き群雄がシモン自慢をしまくるから、冒険者はどれだけ強いかというか、若干の嫉妬心が生まれて、絶対にボコボコにしてやると息巻いているのであったとさ。




