158 プック無双
「うっひゃっひゃっひゃっひゃ。死ね死ね死ね~!」
場所は要塞から1キロ以上離れた高台。そこから放たれるガトリングガンの50BMG弾は、要塞の外壁に絶え間なく降り注ぎ、魔獣がミンチ肉みたいになってるからプックのテンションがエライことになっていた。
「こわっ……こいつ、こんな性格だったんだ」
「ああん? なんか言いはりました??」
「いえ! そろそろゆっくりと右にズラしていきましょうか?」
「うっひゃっひゃっひゃ……」
後ろからガトリングガンの照準を合わせているシモンはドン引き。小声で言ったがプックの耳が近かったから声を拾われたので、慌てて指示を出した。
もちろんユーチェや見習い騎士はドン引きだよ。ヤコビーネだけは「やれやれ~!」と騒いでるけどね。
ちなみにこんなに遠くからガトリングガンが何故命中するかと言うと、的が多くいるからってだけ。高さだけ合わせておけば、多少照準がズレても他に当たるのだ。
右から左にミリ単位でゆっくり動かせば、振り幅は小さくとも外壁の横幅全てに行き渡る。風で真っ直ぐ進んでいないから外壁の壁や奥に着弾する場合もあるが、威力は凄まじいから無駄弾は目を瞑る作戦だ。
それでもプックがガトリングガンを力で押さえ込み、シモンが微調整すればかなりの命中率。魔獣はまさに挽肉状態となっている。
「あっ……」
左から右に、右に左と撃ちまくると、シモンはふと頭に何かが浮かんだ。
「邪神の使い! ユーチェ、どこかにいない確認してくれ!!」
「あの場所をどすか~?」
「代われ。妾が見てやる。ユーチェは白虎小僧に妾の名前を出して、もうしばらく待機と伝えてくれ」
「あ、はい!」
生肉の叩きとなっている場所は見たくなかったので、喜んでヤコビーネに椅子を譲るユーチェ。言われた通りのことをトウンに伝えたら、細目で外壁を眺めていた。
「いた……たぶんこれじゃろ」
「ちょっとタイム。プックは今までの振り幅でゆっくり動かして撃ってくれ」
「うっひゃっひゃっひゃっひゃ」
ヤコビーネが見付けたみたいなのでシモンは離れたけど、プックは返事をしてくれたのかわからないって顔だ。
そしてシモンは元の席に戻ってスナイパーライフを構えると、ヤコビーネが口で説明してくれた辺りをよく見る。
「これか? デカイ魔獣の下にいるヤツ」
「うむ。先程まで逃げ惑っておったんじゃ。イヤなところに隠れたな」
「ギ~リ、狙えるかな? ユーチェ、風読みだ」
「はいは~い」
「針に糸を通すようなモノじゃぞ……」
邪神の使いは死んだ魔獣を盾にして顔が半分出ている程度。どこから攻撃が来ているかはもうわかっているのか、そこから出て来ない。
でも、狙撃手はシモンだ。ユーチェの合図に合わせて引き金を引いた。
「……ヒット。たぶん死んだ」
「この変態!!」
「えぇ~……」
「変態や」
「変態どす」
キッチリ仕留めたのに、ヤコビーネたちから変態扱い。当てるだけでも難しいのに、殺したとか言うんだもん。
「ユーチェはいちおう動かないか見ておいてくれ。ヤコは他にも邪神の使いがいないか確認だ。プックは~……もうじき弾が切れるぞ~?」
「うっひゃっひゃっひゃ……ああ!?」
「なんでわかったんじゃ?」
「変態どすねん」
シモンが指示を出していたら、ガトリングガンの弾切れ。見てもいなかったから、シモンの変態度はアップだ。
「残りは~……ザックリ20ぐらいかな? ほぼプックがやったな」
「凄いなあーし! いや、プーシー10号は孝行息子や~!!」
「そいつ、娘じゃなかった?」
500体以上の魔獣を挽肉に変えたプックより、ガトリングガンを抱き締めてるほうに引くシモン。プックは熱で火傷したからガトリングガンを叩いていたので、さらにドン引きだ。
「あとは援護射撃だけでもいいよな?」
「あ、ああ……あとは下の者に任せよう。ユーチェ、白虎小僧に突撃しろと命令じゃ」
「命令どす??」
「あやつらを見てみろ。陣も敷かず固まっておるじゃろう。まぁ気持ちはわからんでもないがな」
「本当どすな~。ヤコビーネさんが突撃しろ言うとりますで~」
惨殺現場を見たのだ。百戦錬磨の女神軍でも足が止まるに決まっている。ユーチェも同意したら、やんわりとした命令をトウンの耳に送るのであった……
女神軍は急にいそいそと動き出し、全員が配置に就くと第一陣が前進。その間もシモン&ユーチェで外壁の上にいる魔獣を撃っているので、上からの攻撃は皆無だ。
プックは見習い騎士にガトリングガンの弾の補充を急がせていたら、城門がドッカーンと吹き飛んだ。
「おお~。攻城戦用の魔法か?」
「エルフならあの半分の人数でいけますで?」
「なに!? さっきの音、なんなん!?」
「兵士が流れ込んでるから、もう俺たちの出番はないかな?」
「ウソや~~~ん」
残念ながらガトリングガンの補充は間に合わず。女神軍が次々と要塞に突入しているので、シモンもそっとスナイパーライフルを下ろすのであった。




